ガイドラインに基づいた心不全の非薬物療法
トピックス 慢性心不全治療ガイドライン2010年改訂版における改訂ポイント
The revision points in guidelines for treatment of chronic heart failure(JCS2010)
CARDIAC PRACTICE Vol.22 No.1, 15-20, 2011
近年,少子高齢化による社会状況の変化,虚血性心疾患患者の急性期救命率の改善などを背景に,わが国でも慢性心不全患者が爆発的に増加してきている。前回,2005年に改訂版を発行したが,その後の5年間で,慢性心不全治療の薬物・非薬物療法のエビデンスが蓄積され,単に心不全の病態進行を抑制するだけでなく,逆リモデリングや心不全の完治を目指した治療も,夢ではなくなってきている。また,心臓外科領域では,移植法改正の影響や国産の補助人工心臓の保険適応追加により,今後,心移植症例の増加,補助デバイスの適応拡大等が予見されている。一方,わが国の医療経済の状況を考えると,慢性心不全の治療目標は,単なる心事故予防の観点だけでなく,医療負担の増加に対する対策も見直さなければならない状況となってきた。このような心不全集学的治療法の近年の進歩を踏まえ,わが国の慢性心不全治療は大きな変換点を迎えようとしているといえる。今回改訂版では,これら社会的背景の変化と心不全に対する集学的治療の進歩を踏まえて,新たに日本移植学会, 日本心臓血管外科学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本超音波医学会,日本内分泌学会,日本不整脈学会を加えた合計13学会(日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本高血圧学会,日本小児循環器学会,日本心臓病学会,日本心電学会,日本心不全学会と前述6学会)から推薦された研究員で研究班を組織し,ガイドラインの全面的な改訂を行った1)。
記載した治療法や治療薬の中には, まだわが国で保険適応となっていないものも含まれている。本ガイドライン作成の趣旨として, 世界的にコンセンサスの得られている治療法,あるいは承認されていない薬物や治療法でも明確なエビデンスが報告されているものには, 未承認であることを示して記載する方針で改訂を行った。改訂すべき項目が前回改訂版に比べ多くなり,全体のボリュームも少し増えたことをご容赦いただきたい。
前版からのフォーマットの主な変更点としては,治療推奨度を表すクラス分類において, Class ⅡをClass Ⅱa, Class Ⅱbに分け,全体として4つの群に分類し直したこと,さらに治療戦略においてはその分類の根拠となる臨床試験の結果をふまえ,エビデンスレベルをA~Cとして付加した点である。 すなわち,表に示すようにした。
このフォーマットは,日本循環器学会の最近のガイドラインや欧米の治療ガイドラインでも採用されているように,臨床のエビデンスと治療推奨基準の関係を明らかにするための変更である。ガイドラインの具体的な改訂概要は,以下に記述する。改訂版ガイドラインの執筆項目順にまとめさせていただいた。
KEY WORDS
心不全,集学的治療
主な略語
BNP:脳性ナトリウム利尿ペプチド
CRT:心臓再同期療法
OSA:閉塞性睡眠時無呼吸
CPAP:陽圧呼吸治療
慢性心不全病態と診断について
1.心不全の病態診断
心不全診断に心エコー検査の諸指標や,BNP測定を利用した診断フローチャートを導入した(図1)。
記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。
M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。