「SUMMARY」必須微量元素には, 鉄, 亜鉛, 銅, セレン, ヨウ素, クロム, モリブデンなどがあり, 体内に微量しか存在しないが, 必須の栄養素である. 摂取不足で欠乏症, 摂取過剰で過剰症が発症することは, わが国でもまれではない. それぞれの微量元素の体内機能, 欠乏・過剰の症状と要因, 代謝などをまとめた. 欠乏・過剰の予防と臨床現場で異常を見逃さないことが大切である.
「I 微量元素とは」鉄より体内の含有量が少ない元素と定義されている. また, 元素はミネラルともいわれる. ヒトにとって必要不可欠な微量元素は必須微量元素といわれ, 鉄(Fe), 亜鉛(Zn), 銅(Cu), セレン(Se), マンガン(Mn), ヨウ素(I), クロム(Cr), モリブデン(Mo), コバルト(Co)などを指す1)2). 「日本人の食事摂取基準」(2015年版)3)では微量ミネラルとして, コバルト以外の上記の微量元素の推定平均必要量, 推奨量(マンガン, クロムは目安量), 耐容上限量(習慣的にこの値を超えて摂取すると, 過剰症による潜在的な健康障害のリスクが高まる量)が示されている.