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特集 高齢者の栄養管理

特集にあたって

葛谷雅文

栄養-評価と治療 Vol.30 No.3, 14-15, 2013

わが国の高齢化率は2012年には24%を超え, 75歳以上の割合も11.9%に到達する時代となった. 今後さらに高齢化率は上昇し, 恐ろしいことにわが国で人口が増える唯一の年代は75歳以上という, とんでもない時代が予測されるに至っている. まさしく, 現在高齢者はマイノリティーではなく, マジョリティーであるといってもよい. そのうえ高齢化率だけではなく日本人の平均寿命はなおも延びており, もはや65歳以上という高齢者の基準が現実的ではなくなったような感があり, 昔の高齢者のイメージを現代に置き換えると, 75歳以上を高齢者としてもよいのではないか, という思いさえする. そのような高齢者がマジョリティーになりつつある時代では, 以前はとるに足らないと思われていた高齢者の健康上の問題がいくつもクローズアップされてきている. その1つに認知症の問題があり, さらには栄養との関連が強い虚弱の問題がある. 栄養に関する事項は高齢者医療にとっても, ほかの医療と同様に大変重要なテーマである. 高齢者の栄養管理を考えるとき, 生活習慣病予防(過栄養予防)と虚弱予防(低栄養予防)の両方の観点が存在する. また高齢者が関わる医療には周術期を代表とする病院医療, 要介護状態での医療, 特に慢性期医療を担当する療養病床, さらには超高齢社会での充実が早急に求められている地域医療・在宅医療などがあり, これら大変広範囲な領域に栄養管理は関連している. そしてさらに, 終末期における経管栄養をはじめとする人工的栄養療法の是非など倫理的な問題などもあり, 高齢者の栄養管理は膨大な分野になりつつある. そのため本特集では限られたボリューム, 限られたテーマで各領域の専門家にご執筆をお願いした. 今後の高齢者医療と栄養に関して個人的に注目している重要なテーマとしては, 生活習慣病予防・過栄養予防と虚弱予防・低栄養予防の線引きのタイミングをどうするのか, また病院NSTのような多職種が入り込むような栄養管理を地域・在宅でどのように展開するのか, ということである. 地域NSTはまさに多職種協働で実施するシステムであり, 地域包括ケアシステムの概念と違和感なくフィットすると思うのだが, 筆者の知るかぎりほかの分野と比較して少し乗り遅れているように感じられる(地域差があることもあり, 筆者の誤解ならよいのだが). 最後に, 今回お忙しいにもかかわらず, 時間を割いてご執筆頂いた先生方に感謝を申し上げ, 御礼の言葉とさせていただきたい.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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