SUMMARY 急性膵炎は,膵酵素による自己消化によって膵や膵周囲に炎症が波及した病態であり,絶食による膵の安静が治療の1つとなっている。軽症の場合数日の絶食で改善し,早期に経口摂取が可能となるが,重症化した場合は一定期間の絶食を余儀なくされる。このため,栄養管理として早期からの経腸栄養が重要であり,合併症の発症リスクの軽減につながる。また,急性膵炎の予後を左右するのが感染症であり,重症膵炎では炎症の波及による腸管のバリア機能の低下から,腸管外へ腸内細菌が移行するbacterial translocation(BT)が生じ,感染性膵壊死や膵膿瘍などを併発し死に至ることがある。栄養管理と感染症予防の観点から,早期の経腸栄養は『急性膵炎診療ガイドライン』でも推奨されている。発症早期より経鼻経管栄養チューブを留置し,成分栄養剤を低濃度より開始する。重症膵炎では炎症の波及により麻痺性イレウスを生じることが多く,腸管蠕動の確認を行った後から経腸栄養を開始する。下痢などの症状を確認しながら徐々に濃度を上げていき,不足分の栄養は中心静脈より補充することも可能である。経腸栄養の導入により,腸管粘膜の機能退縮予防となり,膵炎が改善後の経口からの食事摂取への移行もスムーズに行うことができ,また,BTを抑制し感染症の予防にもなることから,重症膵炎の救命率向上につながる。 KEY WORDS ■bacterial translocation (BT)  ■感染症  ■経腸栄養