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ICU患者の栄養管理

重症病態に対する栄養管理の実際 (4)急性呼吸不全

Acute respiratory failure

宮田純藤島清太郎

栄養-評価と治療 Vol.29 No.4, 48-50, 2012

SUMMARY
急性呼吸不全では,呼吸筋の筋力を維持しながら原疾患の改善を目指すためにも,早期の適切な栄養管理は必須である。換気量の維持,二酸化炭素の排出,誤嚥の予防などの呼吸器特有の問題点に対処しながら,早期に経腸栄養を開始し,全身状態の向上,感染性合併症の予防に努めるべきである。また,脂質割合の増加や免疫栄養として脂肪酸成分の調整による改善効果も期待されている。

KEY WORDS
■急性呼吸不全  ■人工呼吸管理  ■早期経腸栄養  ■誤嚥  ■免疫栄養

Ⅰ はじめに

 人工呼吸管理を要するような急性呼吸不全患者の管理において,栄養管理は非常に重要であり,患者の予後を大きく左右する因子である。急性期の炎症病態は,代謝亢進に伴う筋肉,臓器からの異化亢進を引き起こし,呼吸筋の筋力低下,内臓蛋白の減少を招くこととなる。早期からの積極的な栄養管理は,合併症の減少,ICU在室・在院日数の短縮,回復後の高いQOL,死亡率の改善などの良好な臨床結果につながることを目標として計画される。
 呼吸不全は多岐にわたる疾患によって生じるため,臨床経過,症状,画像検査,血液検査などの総合的な判断により,感染症,急性肺障害/急性呼吸窮迫症候群(acute lung injury/acute respiratory distress syndrome;ALI/ARDS),慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD),喘息,間質性肺炎などの原因疾患を同定したうえで,原疾患に対する治療に加えて,人工呼吸療法を含めた集中治療管理が必要とされる。このような治療管理の一環として,栄養管理が行われる必要性がある。
 呼吸不全症例に有効な栄養管理を実施する目的で,2010年「急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン」が作成され,2012年にはその改訂版が出されている1)。これは現在の標準的な栄養療法をエビデンスに基づきまとめたもので,項目によってはエビデンスに基づかなくとも日常臨床で標準的に施行されている事項も記載されている。そこで本稿では,急性呼吸不全に伴って必要とされる栄養管理に焦点を当てて解説する。

Ⅱ 栄養療法の選択

 栄養療法には経腸栄養(enteral nutrition;EN)と静脈栄養(parenteral nutrition;PN)があるが,現在は早期のENが推奨されている。これは,これまでの両者の比較検討において,死亡率には差がないものの,感染性合併症がENにて有意に改善すると報告されていることによる。呼吸不全では,適切な呼吸管理が実施され循環動態が安定しており,腸閉塞,腸管穿孔,消化管出血または循環動態が不安定な場合(敗血症性ショックを含む)などによりENが困難な症例でなければ,侵襲後24~48時間以内の早期にENが選択されるが,実際には表1のような管理時の問題点によって難渋することも多い2)。

Ⅲ PN

 ENが不可能もしくは必要なカロリーの確保のためにENのみでは不十分な場合に,PNを選択もしくは併用する。高血糖の危険性はあるが,決められたカロリー投与が可能であるため利便性は高い。PNでは中心静脈を使用する場合がほとんどだが,呼吸不全患者では人工呼吸管理下の高い胸腔内圧の存在に加え,気胸の危険性が高い呼吸器の基礎疾患が併存することが多く,鎖骨下静脈穿刺には細心の注意が必要である。ただし,内頸静脈,大腿静脈を選択しても,管理が長期化した場合には穿刺部位の変更が必要となったり,穿刺部位の感染が問題になる場合が多く,PNと平行してENも計画的に進めていかなければならない。
 急性呼吸不全では血中二酸化炭素濃度の上昇が問題となる場合があり,栄養成分として炭水化物を減らし,脂肪の割合を増やすことで対応することがある。しかしながら,本邦で使用可能な脂肪乳剤は大豆由来であり,感染性合併症の発症率を高めるとの報告3)4)があるため,投与には慎重な判断を要する。ガイドラインにおいても,少量のENが施行できている重症患者,10日間以内のPNのみを行っている重症患者に関しては大豆由来の脂肪乳剤の投与は控えるべきと示されている。鎮静剤のプロポフォール(ディプリバン®)も同様に大豆由来の脂肪乳剤を含むため,注意が必要である。

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