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ICU患者の栄養管理

重症病態に対する栄養管理の実際 (1)外傷・熱傷

Nutritional managements for the critically ill patients with trauma or burn injury

山田太平上田敬博小谷穣治

栄養-評価と治療 Vol.29 No.4, 36-40, 2012

SUMMARY
多発外傷や広範囲熱傷は,手術時や敗血症などの重症内因性疾患と同様に,生体に加わる高度侵襲の代表的疾患群である。侵襲下では,神経内分泌系,炎症性サイトカインなどの反応によりエネルギー代謝が変動するため,栄養管理は免疫能や創傷治癒に大きく関与し,生命予後に直結するものとして重要視されている。本稿では,最近のトピックスである免疫栄養も含め,外傷・熱傷時の栄養管理について概説する。

KEY WORDS
■外傷・熱傷 ■生体侵襲 ■栄養投与時期 ■栄養投与方法 ■免疫栄養

Ⅰ はじめに

 多発外傷や広範囲熱傷は,手術時や敗血症などの重症内因性疾患と同様に,生体に加わる高度侵襲の代表的疾患群である。侵襲下では神経内分泌系,炎症性サイトカインなどの反応によりエネルギー代謝が変動する。特に,外傷・熱傷患者では,直接的損傷による侵襲(first insult)だけでなく,循環血液量減少性ショックなどの二次的内因性侵襲(second insult)も加わることが多く,病態は時々刻々と変化していく。これらの病態には,ショック状態に対する集中治療管理,外科的治療,著しい異化亢進状態に対する栄養管理,リハビリテーション,精神的ケアなど,全身管理のためのさまざまな医療が要求される。そのなかでも,栄養管理は免疫能や創傷治癒に大きく関与し,生命予後に直結するものとして重要視されている。
 本稿では,外傷・熱傷患者における代謝・栄養の特徴,評価方法,栄養投与の時期と方法および免疫栄養について述べる。

Ⅱ 外傷・熱傷患者の代謝・栄養の特徴

 多発外傷・広範囲熱傷の重症患者は高度の侵襲下にあり,組織の修復だけでなく免疫の維持のためにも多くの栄養を必要とする1)。そこで,外傷・熱傷時の免疫について述べると,まず急性期には,直接的損傷により局所(創部)での組織や臓器が障害されて(first insult)炎症が起きる。そして出血やショックにより組織酸素代謝が障害され,さらに炎症が過剰に誘発されると(second insult),結果として全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome;SIRS)が惹起される。亜急性期や慢性期では,創部からの感染による生体侵襲も合併症として起こりうる。
 直接的な組織や臓器の損傷により,マクロファージや単球からサイトカインが産生される。これらは炎症性サイトカインと呼ばれ,まず腫瘍壊死因子(TNF)-αなどが上昇,血管透過性の亢進,血液凝固因子の活性化,白血球の遊走が生じ,次にインターロイキン(IL)-6,IL-18などが上昇,炎症が進行する。First insultによって産生されたTNF-αなどは好中球を遊走させ,好中球や血管内皮細胞にICAM-1などの接着分子が発現する。これにより,好中球は血管内皮細胞上をrollingし,損傷臓器や肺などに蓄積する。Second insultにより炎症はさらに過剰となり,好中球は活性化され,血管内皮細胞の間隙を通り血管外に遊走し,炎症組織にmigrationする。活性化された好中球から好中球エラスターゼ(NE)などの蛋白分解酵素やフリーラジカルなどが放出され,臓器障害が生じる。また,IL-4,IL-10などの抗炎症性サイトカインが過剰になると免疫抑制状態となり,亜急性期以降の感染症などではこれらが作用し多臓器不全の原因となることが知られている2)(図1) 3)。

 このような高度侵襲下では,累積エネルギー不足が10,000kcal以上となると,感染症の増悪や合併,創傷治癒遅延が増加すると報告されている4)。外傷・熱傷患者のみの報告ではないが,ICU患者に対する目標栄養投与量を目標の33~66%としたほうが,それ以上の場合に比べ,有意に死亡率が低いという報告5)もあり,急性期には累積エネルギー不足量が10,000kcalを超えない範囲で少なめに栄養投与を行い,呼吸状態・循環動態・血糖値などを安定させた後に栄養投与量を増加させるのが理想的である6)。具体的な投与量としては,2009年発行の米国静脈経腸栄養学会/米国集中治療医学会(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition/Society of Clitical Medicine;ASPEN/SCCM)による「Guidelines for the provision and assessment of nutrition support therapy in the adult critically ill patient」(ASPEN/SCCMガイドライン)では投与時期は言及せず,Harris-Benedictの式を用いた栄養量を可及的に経腸的に投与することを推奨している7)。多発外傷・広範囲熱傷は,ストレス係数が1.20~1.40となっており,身長・体重・年齢で算出した標準投与量にこの係数を積算したものを目標投与量とする(表1)。

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