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ICU患者の栄養管理

Bacterial translocation

内堀健一郎三島史朗

栄養-評価と治療 Vol.29 No.4, 23-26, 2012

SUMMARY
救急・集中治療領域での重症患者の治療において,感染源がみつからないにもかかわらず炎症が遷延する症例にしばしば遭遇するが,感染巣の1つとして腸管が指摘されるようになり,bacterial translocation(BT)によって敗血症(sepsis),多臓器不全を起こす可能性が指摘されている。

KEY WORDS
■敗血症(sepsis)  ■腸管のバリア機能 ■腸内細菌叢

Ⅰ はじめに

 救急・集中治療領域での重症患者の治療において,細菌,ウイルス,真菌による感染の制御は患者の予後を左右する重要な治療の1つである。そのために原疾患の治療と並行して各種検査を行い,感染源の同定を行うが,そのような検査を行っても感染源が不明であり,敗血症(sepsis)の進行を許してしまう症例もある。1979年にはBergら1)が「Bacterial translocation(BT)とは,消化管内の生菌が腸上皮を通過して粘膜固有層に至り,さらに腸間膜リンパ節や他臓器へと移行すること」と定義したことから,従来,細菌はおろかたんぱく質すら吸収されないと考えられてきた腸管が,新たな感染源と考えられるようになった。腸管を感染源とした場合,感染源が不明な菌血症(bacteremia)やsepsisの発症機序を説明できる可能性が高いことより,BTにまつわる実験的検討およびclinical studyが現在まで数多く行われてきた。その結果,現在では移行体として,生菌だけでなくエンドトキシンなどの細菌性因子や死菌なども併せたmicrobial translocation2)もBTの概念に含まれている。ただし,BTは動物実験においてその存在が確固たるものとなっているが,人体においては状況証拠のみであり実証された報告は少ない。

Ⅱ BTの発生機序

 BTの発生には多数の因子が関わっているが,その代表的なものは以下の通りである。

1.腸内細菌叢の異常

 人体の腸管内には100兆個に及ぶ細菌や真菌が共生し,腸内細菌叢を形成している。その内容はStreptococcus 属,Lactobacillus属,Bacteroides属,Clostridium属などの嫌気性菌が多くを占めている。高度侵襲や抗菌薬・制酸剤の投与などにより,平衡状態であった腸内細菌叢のバランスが崩れ,病原微生物やその毒素が腸管内で異常増殖し,腸管上皮への接触を許す。

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