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ICU患者の栄養管理

ICUにおける代謝モニタリング

Nutritional metabolic monitoring in the ICU

矢口有乃

栄養-評価と治療 Vol.29 No.4, 18-19, 2012

SUMMARY
ICU患者に対しては,必要エネルギー量とたんぱく質量のモニタリングが重要であり,総エネルギー量として25~30kcal/日,たんぱく質量は1.2~1.5g/日で開始するのが好ましい。過剰栄養と窒素負荷を避けるためにも,ICUでは栄養代謝のモニタリングが必要となる。肥満や重症合併症例には間接熱量計の使用が望ましいが,日常の診療では身体計測と血液,尿検査によりモニタリングが可能である。

KEY WORDS
■代謝モニタリング ■基礎エネルギー消費量 ■必要たんぱく質量 ■窒素バランス ■間接熱量計

Ⅰ はじめに

 ICU患者は多大な侵襲を受けており,臓器障害を合併し,種々のサイトカインに対する急性期の反応を呈すると同時に単球,マクロファージ,リンパ球の免疫抑制状態にも陥っている。またインスリン抵抗性の耐糖能状態,筋肉内のたんぱく質の喪失と脂肪の増加,腸管の吸収障害も合併しやすい。さらに免疫抑制状態は,感染症の合併を起こしやすく,筋力低下,呼吸機能や心機能の低下,創傷治癒の遅延からほかの合併症を発症し,死亡率にも影響してくる。したがって,ICU患者においては早期からの栄養による治療が重要になってくる。ICUにおける栄養の代謝モニタリングの目的としては,①糖,たんぱく質,脂肪のように多量に必要とされる栄養素(多量養素)とビタミンや微量元素のような少量だけ必要な成分(微量養分)の供給コントロール,②適切な必要エネルギー量と投与量の評価,③血糖値のコントロールが挙げられる。また過剰の栄養投与は,高血糖を促進し合併症発症にも関連する1)。したがって,ICUのすべての患者において適切な必要栄養量を投与することは,合併症の発症に関与する蛋白熱量不足,過剰栄養,高血糖を避けるために不可欠である。

Ⅱ 必要エネルギー量

 まず,ICU患者においてどのように必要エネルギー量をモニタリングできるかについて述べる。エネルギー消費量(energy expenditure;EE,kcal/日)は,いろいろな予測式があるが,最も正確な計測は間接熱量計によるもので,近年のガイドラインでは,必要エネルギー量を間接熱量測定法で計測することを勧めている2)3)。呼気ガス分析と蓄尿により,全身酸素消費量(VO2,㎖/分),二酸化炭素産生量(VCO2,㎖/分)と尿中尿素窒素量(g/日)を計測し,Weirの式から求められる。
  EE=5.67×VO2+1.60×VCO2-2.17×尿中尿素窒素量
VCO2と尿中尿素窒素量が測定できない場合には,概算値になるが,VO2から以下の式により予測することができる。
  VCO2=6.8×空腹時VO2,尿中尿素窒素量=7.1×食後VO2
 間接熱量計は一時点での計測値であり,患者の1日の総必要エネルギー量を反映しない可能性があるという理由で,日常的に使用されていない施設もあるが,合併症の多い重症患者,高度の肥満で,重症熱傷や重症頭部外傷,脳血管障害を合併している患者には有用である4)。
 基礎エネルギー消費量(basal energy expenditure;BEE,kcal/日)は,より簡単に身体計測値,体重(kg),身長(cm),年齢により計算できる。最も広く使用されているのが,Harris-Benedictの式である。
  男性BEE=66.47+(13.75×体重)+(5.00×身長)-(6.76×年齢)
  女性BEE=655.1+(9.56×体重)+(1.85×身長)-(4.68×年齢)
このHarris-Benedictの式は,健常人の安静時必要エネルギー量を予測しているので,個々の患者においては栄養状態,安静度や疾病などにより,表1の係数を用いて補正を行う。

 最も簡易で実用的なEEの計算は,体重のみで行うものである。ICU患者の場合は肥満でないかぎり,25~30kcal/kg/日を平均的な値として使用することができる5)。
 必要エネルギー量の決定後は,たんぱく質・エネルギー不足を避けるために,エネルギー量とたんぱく質の投与量をモニタリングする必要がある。

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