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栄養療法に対する認識と期待

医学生は臨床栄養に対してどこまで知っていて何を知るべきか

深柄和彦侯弘知山本泰輔小田原成彬

栄養-評価と治療 Vol.29 No.3, 52-56, 2012

深柄(司会) 今回の特集は,普段から栄養療法に携わっている医師やコメディカルだけではなく,いわゆる一般の方たちやいろいろな分野の方たちが栄養療法に対してどのような知識があり,何を期待しているのかを伺うことを通して,栄養療法に専門的に携わっている方たちの方向性を確認し,場合によっては修正や新しい試みを考えなくてはならないのでは,という視点で企画立案しました。そのなかで,現役医学生にもぜひ伺ってみようということで,東京大学医学部医学科6年生の侯 弘知君,山本泰輔君,小田原成彬君の3名の学生に集まっていただきました。

司会 
深柄 和彦
東京大学医学部附属病院手術部准教授

出席者 (発言順)
侯  弘知
東京大学医学部医学科6年生

山本 泰輔
東京大学医学部医学科6年生

小田原成彬
東京大学医学部医学科6年生

「栄養」に関する講義について

深柄 私が学生の頃は栄養療法の講義などはまずなかったように思います。そのうえ,医者になってからも,研修医のときに指導医から「ナトリウムはこのぐらいです」とか「この場合はこういう輸液を入れます」などと教えられて,ああそうなのかと思っていた程度です。だから,学生として栄養療法についての講義や教育を受けるという機会はほとんど皆無でした。では,現役学生の皆さんはどうでしょう。これまでに1度講義があったはずですが,覚えていますか。
侯 外科の講義で受けた覚えがあります。はっきりとは覚えていませんが,総論的だったように思います。
深柄 はい,「輸液栄養管理」として私が講義しました。ほかの皆さんにもおそらく私が講義をしたはずです。50分のなかで栄養療法の大切さを理解してもらおうと,栄養状態不良の入院患者はたくさんいるので見落とさないようにしましょう,栄養管理の基本として各種栄養素をバランスよく投与しなければいけません,そうするといろんな合併症予防などにもつながりますよという話をしました。しかし,ベッドサイドの実習やらいろんなことを学ぶうちに,やはり忘れてしまうということですね。さて,外科臨床では私の講義だけですが,たとえば代謝・内分泌の講義のなかに低栄養状態の話はありましたか。
侯 代謝・内分泌の講義は受けましたが,記憶にありません。
山本 覚えていないのではなく,話そのものがなかったと思います。
深柄 それでは基礎ではどうでしょう。たとえば病理学だとかいろいろあるなかに,栄養の講義はありますか。
小田原 生化学の講義で「生化・栄養」という分野名であったように思います。
深柄 なるほど。それでは「生化・栄養」ではどんなことを学びましたか。ブドウ糖や脂質の代謝などの話でしたか。
山本 もちろん,糖代謝の話はありました。
侯 それは生化学的な内容ですよね。
深柄 そういった話が生化学の講義としてあったのですね。
侯 栄養学的なことも少しあったように思います。
山本 アミノ酸の代謝のこととか,そういう基本的なこと?
侯 それはもちろんだけど,それだけではなかったように思うのですが……。
深柄 はい,わかりました。それでは基礎の科目でも栄養に関係する講義が少しあったということですが,その講義を受けて,栄養はとても大事だと思いましたか。栄養に関する基礎の講義を受けて,それが臨床につながっていくと考えましたか。
小田原 講義を受けた当時はそこまでは考えていませんでした。
侯 確かに基礎のときには考えませんでした。ただ,栄養について強調された講義が1度あったことを覚えています。入院患者の栄養状態がいかに悪いかというエビデンスをいくつか出されていた講義です。いま思うと先生の講義だったのですね。しかし,栄養に関して意識が向いたのはそのときだけでした。
深柄 ようするに,基礎での講義を受けて,栄養っておもしろいなという感想にはなかなかならないということですね。
侯 難しいですね。
深柄 確かに,医学部の学生が目指すところとは少し違うので,なかなか興味を惹かれないでしょう。結論からすれば,皆さんはこれまでに基礎では代謝と関連した栄養に関する講義を受けていますが,栄養療法の重要性についての講義を受けたのは1度だけということですね。

栄養療法に対する知識について

深柄 それでは,実際の栄養療法とはどのようなものだと考えていますか。
侯 ベッドサイド実習での経験ですが,経口摂取ができないうえに胃瘻の造設も難しいような患者に対して経静脈的に高カロリー輸液を入れたり,あるいは糖尿病やある特定の患者に炭水化物や蛋白,脂質の比率を調整して与えたりすることでしょうか。
山本 僕の場合は心療内科での経験ですが,経口で食べることができない患者さんへ高カロリー輸液を入れているのをみかけましたので,そういうイメージを強くもっています。
小田原 僕はERでの経験ですが,ERでは点滴をしている患者さんがたくさんいます。そのなかで意識がほとんどないような患者さんに末梢から栄養を補給する,というイメージです。
深柄 皆さん,栄養療法というと点滴というのが,やはりまず頭に浮かぶようですね。では,経口摂取が治療法だという意識はあまりないのでしょうか。
山本 腎不全や糖尿病の患者さんに対して,経口摂取による総カロリーや塩分量,蛋白量などを制限するのも立派な栄養療法の1つだと思います。
深柄 そうですね,それも栄養療法です。では,小田原君はどうでしょう。
小田原 基本的に経口で食べられる患者さんに関しては,生きる楽しみというか,QOLの面でも経口摂取するのが一番良いと思います。しかし,やはり体力が落ちた患者さんや高齢者の方だと誤嚥性肺炎が怖いので,体力に配慮しながら,できれば経口摂取で,経腸栄養も考えつつ,最終的な手段として静注や中心静脈栄養を行うということでしょうか。
深柄 経口や経腸から栄養を投与するのが重要であると認識しているわけですね。それはなぜですか。
小田原 腸管免疫が大事だということについて教えていただいたのを覚えています。
山本 僕もなるべく口側のほうから入れたほうがいいというような認識はあります。経口が一番良くて,それがだめなら胃や腸から。
侯 しかし,実際の現場でそれを実践できるかどうかというと自信はありません。

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