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周術期の代謝栄養管理─ERASプロトコールを巡って─

胃癌手術におけるERASプロトコール

ERAS protocol for gastrectomy for gastric cancer

林勉山田貴允青山徹吉川貴己長晴彦尾形高士円谷彰村松美穂中田恵津子

栄養-評価と治療 Vol.29 No.2, 37-40, 2012

SUMMARY
胃癌手術は消化器手術のなかでも比較的高侵襲な手術で,術後経口摂取形態に与える影響も大きいことから,術後体重減少などの影響が生じやすい素因が考えられる。ERASプロトコールは手術による影響を最小限にとどめ,術後回復能力を最大限に高める集学的なアプローチで,胃癌術後の回復を支持する利点を多く含んでいる。本稿では神奈川県立がんセンターでのERASプロトコールに基づく胃癌周術期管理の実際と短期成績を示し,胃癌手術におけるERASプロトコールの認容性と利点について,および今後の課題について考察する。

KEY WORDS
■ERAS ■胃癌 ■早期経腸栄養

Ⅰ はじめに

 近年,周術期全体の管理方法により患者の術後回復能力が左右されるevidenceが示され,なかでも回復能力を最大限にするための集学的アプローチとしてEnhanced Recovery After Surgery(ERAS)プロトコールが提唱され1),結腸切除術をはじめとした多くの消化器手術に導入されている。しかし,胃癌手術におけるその認容性と有用性についての知見は少なく,いまだevidenceが確立されているとは言い難いのが現状である。
 本稿では,胃癌に対する胃切除術のERASプロトコールの導入と神奈川県立がんセンターにおける成績を紹介し,今後の課題について述べる。

Ⅱ 胃切除術の特徴とERASプロトコール

 胃切除術は消化器手術のなかでも比較的高侵襲手術で,術後合併症の発生率も本邦の標準治療であるD2郭清術を施行した場合20.9%と報告され2),消化器手術のなかでも術後合併症の発生率が比較的高率な手術と考えられる。
 また,術後早期における腸管運動の回復が認知され,早期経口摂取が積極的に行われるようになった下部消化管手術とは異なり,上部消化管手術では吻合部に対する過負荷の懸念から,術後早期の経口摂取は一部の施設でその取り組みが報告3)4)されるのみで,十分な検討がなされていないのが現状である。
 一方,胃切除後は術後の経口摂取形態が大きく変化し,絶対的な食物摂取量の低下を招く。さらに,ダンピング症候群や逆流性食道炎が間接的に食物摂取量の減少をもたらし,術後10~20%程度体重が減少する。このことが術後のQOLの低下や術後補助化学療法のコンプライアンス低下の原因となることが推察される。
 以上より,胃癌手術の特徴を要約すると,①高侵襲手術,②早期経口摂取開始による吻合部過負荷への懸念,③術後経口摂取形態の変化と体重減少が挙げられる。
 ERASプロトコールがもつ周術期全体の管理方法の工夫により,術後回復能力を強化することで合併症の発生を予防し,患者予後を改善するという概念はこれらの問題を取り組むうえで利点を備えていると考えられる。

Ⅲ 当院ERASプロトコールの概要

 ERAS study groupにより提唱されたERASプロトコールとして推奨する17項目の方策を表1 1)に,当院で現在実施しているERASプロトコールの概要を図1に示す。

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