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第34回日本栄養アセスメント研究会発表演題より

ネフローゼ症候群における栄養指標としての血清コリンエステラーゼ値の意義

Serum cholinesterase as an indicator of nutritional status in patients with nephrotic syndrome

畑伸顕和佐勝史須見遼子辻本貴江岡本梓竹中美樹若林亜耶山本美紀子清水健太郎曹英樹福澤正洋

栄養-評価と治療 Vol.29 No.1, 28-31, 2012

SUMMARY
ネフローゼ症候群患者における栄養指標としての血清コリンエステラーゼ(ChE)値の有用性について検討した。血清アルブミン値とは異なり,血清ChE値と尿蛋白排泄量とは有意の相関を認めず,経時的変化においても血清ChE値は尿蛋白の漏出程度に左右されなかった。以上より,ネフローゼ症候群患者の栄養指標としての血清ChEの有用性が示された。

KEY WORDS
■ ネフローゼ症候群 ■ 血清アルブミン ■ 血清コリンエステラーゼ ■ 尿蛋白

Ⅰ 目 的

 現在,生化学的な栄養指標として,血清アルブミン(Alb)(分子量66kDa),トランスサイレチン(分子量55kDa),トランスフェリン(分子量80kDa)などの血清蛋白が広く用いられている1)。しかし,ネフローゼ症候群においては,尿中に大量に血清蛋白が漏出し,それに伴い血清Albをはじめとする多くの生化学的な栄養指標も漏出するために,これらを栄養指標として用いることが困難である2)。したがって,本病態の栄養指標として用いることのできる血清蛋白を検討することは臨床的に重要な課題である。
 血清コリンエステラーゼ(ChE)(分子量350kDa)は上記の血清蛋白に比べて分子量が大きく,一般に尿中には漏出しにくいと考えられている3)。しかし,ネフローゼ症候群において,血清ChEは肝臓の蛋白合成能を反映する肝機能指標としての有用性が報告されているが4),栄養指標としての有用性については明らかでない。そこでわれわれは,ネフローゼ症候群における栄養指標としての血清ChE値の有用性について検討した。

Ⅱ 対象・方法

 対象は,大阪大学医学部附属病院臨床検査部に検体の提出されたネフローゼ症候群患者39例(のべ321検体)で,内訳は入院患者28例,外来患者11例,男性23例,女性16例,平均年齢37歳であった。また,対照群として非ネフローゼ症候群患者171例(のべ1,336検体)を用いた。内訳は入院患者114例,外来患者57例,男性88例,女性83例,平均年齢43歳であった。これらの症例において採血を実施し,血清Alb値(正常値:3.6~4.7g/dℓ)および血清ChE値(正常値:220~470U/ℓ)を測定した。また,尿検体においては蓄尿あるいは随時尿を用い,尿蛋白排泄量の指標である尿蛋白(U-TP)とともに,随時尿からの1日蛋白排泄量の目安となる尿蛋白/尿クレアチニン比を測定した5)。ネフローゼ症候群患者と対照群における血清Albと血清ChEの相関性を検討するとともに,ネフローゼ症候群患者における血清Albあるいは血清ChEと尿蛋白排泄量の相関性についても検討した。さらに,ネフローゼ症候群症例2例の臨床経過において,U-TPの増減と血清Albおよび血清ChEの経時的変化を検討した。
 統計処理(2群間の相関)は,相関分析を用い,危険率pが0.01未満を有意とした。

Ⅲ 結 果

1.血清Albと血清ChEとの相関

 血清Albと血清ChEの相関を調べたところ,対照群では有意な正の相関性を認めたが(p<0.001)(図1A),ネフローゼ症候群症例では,これらのパラメーターでは有意な負の相関を認めた(p<0.001)(図1B)。

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