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NST活動の現状と今後の展開

NST活動の現状と問題点 がん専門病院におけるNST

長晴彦中田恵津子辻智大石原雅美村松美穂

栄養-評価と治療 Vol.28 No.4, 43-46, 2011

Summary
がん領域における栄養サポートの効果は証明されていない。しかし,データを解析すると改めて栄養不良が多いことに気づく。栄養サポートチーム(NST)活動を効率的に行うには,スクリーニングから介入までを連動させることが重要であり,スクリーニングツールの選択がその第一段階となる。現時点では介入による直接の恩恵は得にくいが,目的を明確にしたうえでの介入には意義があると考えられる。

Key words
■ がん ■ 栄養サポートチーム(NST) ■ 栄養評価

Ⅰ はじめに

 わが国における累積生涯がん罹患率/累積生涯がん死亡率は,男性で53.6%/26.1%,女性で40.5%/15.9%と報告されている1)。統計上は生涯を通じておよそ2人に1人ががんにかかり,5人に1人はがんが原因で死亡していることになる。がん種や進行度にもよるが,がん患者の多くは栄養不良を伴い,特に膵癌や胃癌,食道癌で体重減少が高頻度に認められる。体重減少に代表される栄養不良は,消化器がんにおいて,生存期間や治療効果,QOLを低下させる独立した因子と考えられており2),特にこれから治療を行う患者においては治療開始前に解決することが望ましい。しかし,がん患者の栄養不良は複合的な要因で発生するため,栄養管理の効果を証明することは難しく,がん領域において有効であるとする明確なエビデンスは乏しい。
 本稿では,がん専門病院である当院での栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)活動を紹介し,その意義について考察する。

Ⅱ がん領域で用いる栄養評価

 一般に栄養のスクリーニングツールには,標準化されるに足るエビデンスがあること,非侵襲的であることが求められる。また,一人の患者にかける医療スタッフ数や診療時間が限られるわが国の医療事情では,コメディカルが行っても簡便かつ迅速に施行できることも重要である。評価者によるばらつきが少なく,今後栄養不良になりうるat riskも含めた対象を正確に割り出し,評価に応じた指針が付加されていればなおよい。
 現在使用されている栄養評価ツールのうち簡便でスクリーニング向きのものは,SGA,NRS(nutrition risk screening)-2002,MUST(malnutrition universal screening tool)3),MST(malnutrition screening tool),MNA-SF(mini nutritional assessment-short form)の5つであろう。特に最初のスクリーニングでは栄養不良群の見落としを最小化できるよう,特異度は多少低くても感度の高いものがよいと考えている。NRS-2002を標準評価法として,入院がん患者に対しMSTとMUSTの比較を行った検討では,MUSTは栄養不良の抽出において特異度は77%と低いが感度は97%と高く,また長期入院リスクの同定にも優れていたと報告されている4)。一方,同じく入院がん患者に対しSGAを標準評価法としてMUSTを検討した別の報告では,栄養不良抽出感度は59%,特異度75%といずれも低値であった5)。このように,標準を何にするかによっても結果は大きく異なるため,どのツールが優れているかの結論は出ておらず,各施設の現状に合わせて使用しやすいものを選択するのが妥当と思われる。
 当院では2006年4月にSGAを導入している。われわれが2009年から2010年にかけてその評価を行ったところ,中~高リスクの割合はわずか5%程度にすぎず,栄養不良群の絞り込み不良が疑われた。原因はおそらく問診項目が主観的であり,良いほうに解釈が可能なためと考えられた。また一方で「評価不能」が10%を超え,そのなかにも栄養不良がマスクされたと思われた。そのような現状を踏まえて2010年7月に栄養評価スクリーニングをMUSTに変更した。MUSTを選択した理由は,評価項目が3項目と少なく,簡便でかつ「評価不能」の減少が期待できるためである。成人患者向けのツールであり,小児患者がいない当院の状況とも一致した。胃癌などは肥満が手術リスクであるため,肥満に関する記載があることも,がん領域では有用と思われた(図1)。

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