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NST活動の現状と今後の展開

NST活動の現状と問題点 大学病院におけるNSTの現状と課題

田中芳明石井信二朝川貴博浅桐公男八木実大塚百香髙松むつ子井樋涼子井上光鋭大津山樹理山田卓坂本亜沙美

栄養-評価と治療 Vol.28 No.4, 38-42, 2011

Summary
久留米大学病院は,これまで栄養サポートチーム(NST)による適正な栄養療法の実践で医療経済効果をあげてきた。しかしながら,NST加算の算定を契機にカンファランス・回診を直接抽出例にも実施し,NST活動の変革に取り組んだ。その結果,院内の栄養管理の標準化に少しずつ近づき,また医師の依頼件数は増加して,NSTによる医療・経済効果の推進に大きな影響をもたらすものと考えている。今後の課題は,NSTを牽引する医師のさらなる育成のため,卒前,卒後の一貫した臨床栄養教育の実施が肝要である。

Key words
■ 栄養サポートチーム(NST) ■ NST専門療法士 ■ NST加算 ■ 臨床栄養教育 ■ 医学教育

Ⅰ はじめに

 日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition;JSPEN)は栄養サポートチーム(nutrition support team;NST)稼動施設の増加のために積極的に活動を進め,2011年2月末で認定NST稼働施設は1,447施設であり,厚生労働省報告(2011年3月)の一般病院数7,568施設を対象としたNST稼働率は19.1%(1,447/7,568)となった。これは,2004年の第1回稼働施設認定時のNST稼働率3.2%(254/7,999)の約6倍で,かなり増加はしてきているが,医療の質の向上の観点からはさらなる普及が望まれる1)。
 また,JSPENはNSTスタッフの個々の知識,技術の習熟度を客観的に評価し,その質を保証する目的で,一定の評価基準を満たした医療従事者に対しNST専門療法士の認定を開始し,2011年度までに4,028名が認定され今後も増加するものと考えられる。加えて,TNT(total nutritional therapy)研修会や日本外科代謝栄養学会との共催のNST医師教育セミナーは,2010年末で合わせて16,000名を超える医師が受講し,また2011年度から認定医・指導医制度も発足して医療の質の向上にさらなる貢献が期待される。
 以上,わが国におけるNSTは全体的には発展しつつあるが,NSTスタッフの確保と質の維持,臨床栄養教育など,個々の医療施設における問題点はいまだ少なくないと考えられる2)。本稿では,当院のNSTの歩み,特に2010年4月からのNST加算に対するNST活動の変革とその効果,さらには今後の課題について報告する。

Ⅱ 大学病院におけるNSTの現状

 久留米大学病院では,消化器内科,消化器外科,小児外科が独自に行っていたNST活動を,2004年2月からはNST運営委員会を設置して全科型NSTとして新たに始動し,医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,臨床検査技師,言語聴覚士,および医事課や情報システム室のスタッフが委員会メンバーとなって,適正な栄養療法の実践への取り組みを開始した。
 まず,不適切な栄養療法および栄養不良患者の抽出,改善を主業務として医療・経済効果の向上を目指した。すなわち,不適切な栄養療法(TPN処方,食事オーダー)は主にNST薬剤師,NST管理栄養士,NST看護師が中心となって日々チェックし担当医に提言した。その結果,3日以上のTPNと食事併用症例はほぼ皆無となり,また症例に見合った適量な食事の提供や,疾患治療の直接手段として処方された特別食の適切な提供が可能となって,2011年9月現在で適量食(主食,副食半量,約7%),S食(主食半量,約7.5%),特別食(約40%)の合計が提供食事全体の約55%となった。またNST臨床検査技師は,低アルブミン値に基づき抽出した栄養不良が疑われる症例のリストを毎週, 各病棟の責任者に報告し,栄養療法の必要性に関する認識を高める努力を続けてきた。以上の活動でかなりの医療経済効果が得られてきたが,栄養不良患者に対するNSTカンファランスは週1回,月13~14症例の依頼限定であるためNSTの関与は十分とは言えず,これらの活動では全病棟における栄養療法の質の向上は困難と考えられた。
 そこで,2010年4月からのNST加算の算定を契機に,より多くの患者に対して質の高い栄養療法を実践するため,栄養治療部を設置し,NSTカンファランス・回診を依頼症例のみでなく直接抽出例にも実施し,またカンファランス・回診の方法も変更してNST活動の変革に取り組んだ。
 まず管理栄養士1名がNST専従者として,栄養管理に係る所定の研修を終了した医師11名(外科医師6名,内科医師5名)とNST専門療法士取得者33名(看護師20名,薬剤師3名,管理栄養士6名,臨床検査技師3名,言語聴覚士1名)がNST専任スタッフとして栄養治療部を組織し,不適切な栄養療法の改善勧告や臨床検査値に基づく栄養不良例の病棟責任者への提示は今まで通り実施して,カンファランス・回診の実施を従来の依頼型から直接抽出型に変更した。
 すなわち,専従者が毎週木・金曜日午後に,予め決定している次週カンファランス予定病棟(内科系は月曜,外科系は火曜)で,Controlling Nutritional Status(CONUT)3)(表1)や食事情報により栄養不良例を直接抽出し,また病棟担当管理栄養士から栄養摂取不良例の具体的な情報収集を行う。

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