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症例による病態栄養講座

第71回 合併症をもつ2型糖尿病患者の栄養管理

山本卓也

栄養-評価と治療 Vol.28 No.4, 12-14, 2011

Point
糖尿病患者における細小血管障害および大血管障害の発症・進展は,その後の生命予後あるいはQOLに多大な影響をもたらす。さらに,2型糖尿病患者においては高血圧,脂質異常の合併頻度が高く, 血糖の管理だけでなく,血圧・脂質を含めた包括的な治療と生活習慣の改善に向けた栄養指導,栄養管理が重要となる。

Ⅰ.はじめに

 糖尿病の合併症には高度のインスリン作用不足によって起こる急性合併症と長期間持続する高血糖による全身の血管組織の変性や機能喪失をもたらす慢性合併症がある。急性合併症には,糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群,乳酸アシドーシスなどがあり昏睡に陥って命を失うこともある。慢性合併症には,糖尿病の3大合併症と呼ばれる糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性末梢神経障害をはじめ,感染症や動脈硬化が原因で起こる心筋梗塞,脳梗塞,下肢閉塞性動脈硬化症などさまざまである1)。

Ⅱ.症例提示─糖尿病の治療中に脳梗塞を発症した症例

【患 者】63歳,女性,無職
【既往歴】糖尿病,高血圧,脂質異常症,肥満,統合失調症,脳梗塞
【現病歴】3年前に糖尿病と診断され,その後も糖尿病の治療のため外来通院をしていたが,精神的に不安定で食事療法についてもつじつまの合わないことを話すことが多く,栄養指導も中断していた。2年前には下肢の浮腫,蜂窩織炎治療のため入院した。半年前より自己判断により通院を中断していた。最近,食欲不振,全身倦怠感が持続し,ふらつきがあり歩行困難のため入院となった。
【入院時身体所見】身長152.1cm,体重73.6kg,BMI31.8 kg/m2。体温,脈拍,呼吸数,心音呼吸音,腹部に異常を認めず。
【入院時臨床検査値】HbA1c 8.2%,随時血糖235mg/dl,LDL-C 272 mg/dl,HDL-C 57 mg/dl,中性脂肪 199 mg/dl,Cre0.47mg/dl,BUN16mg/dl,Hgb14.1mg/dl
【経 過】入院時,脱水症状が強く補液,インスリン治療を開始。話しかけても目を開けるだけで応答がないため,以前からの統合失調症の悪化と考えられた。麻痺はなく,平衡感覚は保たれていた。糖尿病食1,400kcal/日で一旦食欲も回復してきたが,6病日目に意識レベルがさらに低下,傾眠傾向となったため,緊急頭部MRIを施行し,両側性脳梗塞と診断された。脳外科に転科となり,輸液療法2,500ml/日が開始された。10病日目に経腸栄養を開始,絶食期間は2日間であったため,糖尿病用の栄養剤1,250kcal/日,150ml/時で開始し,水分は輸液量と調整。理学療法も開始した。名前のみ言うことができ,両側上肢の運動は良好だが,下肢の動きは悪い状況であった。経腸栄養,理学療法を続け,20病日目から言語聴覚士による間接訓練を開始した。さらに当院での段階的摂食嚥下訓練基準(表1),嚥下食の食形態選択基準(表2)に沿って経口摂取へのプログラムを開始した。

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