日本栄養・食糧学会大会
第65回日本栄養・食糧学会大会
栄養-評価と治療 Vol.28 No.3, 54-55, 2011
1.はじめに
2011年5月13日(金)~15日(日),お茶の水女子大学(東京都)において,第65回日本栄養・食糧学会大会が開催された。今回の大会は,第28回日本医学会総会が東京で開催されることもあり,『栄養・食糧学と医学の融合』を1つのテーマに,2つの招待講演,4つの特別講演,5つの教育講演を取り上げ,11のシンポジウムとInternationalシンポジウム,ジョイントシンポジウム,サテライトシンポジウムを企画した。さらに,「Emergency Nutrition─災害時の栄養・食糧問題とその対策を考える」と題したシンポジウムを緊急企画し,災害時の食の支援について,栄養・食糧学の見地から考える場を設けた。震災の影響が懸念されたが,2,300名を超える参加者が集い,活発な討議が行われた。
2.招待講演
招待講演では,韓国食品科学・栄養学会のHong Soo Ryu会長,台湾栄養学会のChin-Kun Wang会長を招待し,伝統的な発酵食品や,漢方薬の機能性についての研究成果に関するご講演をいただいた。さらに,アジアの栄養学を担う学会間において一層の協力関係を築き,研究の発展を目指していきたいとの姿勢が示された。
3.特別講演
板倉弘重先生(茨城キリスト教大学名誉教授)の「新時代の栄養学」と題した特別講演では,医療の場で栄養が軽視されてきた経緯から,今後栄養学が生かされるためにはより統合的な栄養学を推進していく必要があるとの提言がなされた。阿部啓子先生(東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授)からも,「統合食品機能学─その分子論的基盤と将来展望」と題して食品の働きとして栄養性,嗜好性,機能性の3つがあり,それらは互いに分子レベルで連動していることが紹介され,統合食品機能学として全体を捉える研究が重要になることが示された。寺本民生先生(帝京大学医学部内科学教授),中村丁次先生(神奈川県立保健福祉大学学長)には,「医学からみた栄養学」,「栄養学からみた医学」と題してそれぞれの立場から意義が述べられた。高齢化や生活習慣病患者の増加といった問題に加え,東日本大震災の被災地における栄養問題にも触れ,栄養学と医学の連携が今後一層重要になるとの認識で一致した。
4.教育講演
教育講演では,食品の機能性について,特定保健用食品(トクホ)制度や研究開発分野における現状と課題が紹介されたほか,高血圧,糖尿病といった生活習慣病に対する食事療法の意義が発表された。また,「生命のスーパーシステムと生存─生物進化から生老病死を診る─」,「おいしさを数式であらわす」と題された講演もあり,栄養・食糧学を網羅する充実した内容となった。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。