<< 一覧に戻る

用語解説

インクレチン

鈴木綾子江藤一弘

栄養-評価と治療 Vol.28 No.3, 50-53, 2011

POINT
インクレチンとは,食事摂取に伴い消化管から分泌され膵β細胞に作用してインスリン分泌を増強するホルモンの総称である。インクレチンは,グルコース依存性インスリン分泌増強だけでなく,膵β細胞保護作用,膵α細胞でのグルカゴン制御作用のほか,胃排泄遅延,中枢神経系での食欲抑制など膵外臓器での血糖上昇抑制作用も知られている。近年脚光を浴びているインクレチン関連薬は,低血糖のリスクが低く,また2型糖尿病患者の経年的な膵β細胞数の減少を抑制する可能性を秘めた糖尿病治療薬である。

Ⅰ インクレチンとは

 インクレチン(incretin)とは,食事摂取に伴い消化管から分泌され膵β細胞に作用してインスリン分泌を増強するホルモンの総称で,intestine secretion insulinからの造語である。生理的インクレチンとして小腸L細胞から分泌されるグルカゴン様ペプチド- 1(glucagon-like peptide-1;GLP-1)と小腸K細胞から分泌されるグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide;GIP)が重要な役割を果たしていると考えられている。

Ⅱ インクレチンの歴史

 1964年Elrickらにより健常人に対するブドウ糖の経口投与が経静脈投与に比べ,インスリン分泌をより効率的に促進すること(インクレチン効果:図1)が報告された1)。

1973年Dupreら2)は,胃酸分泌抑制作用を有する消化管ホルモンgastric inhibitory polypeptideがインスリン分泌を著明に促進することを示し,glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)と改名した。その後1987年Kreymannらが,健常人にブドウ糖と空腸L細胞から分泌されるGLP-1を静脈内投与するとインスリン分泌が著明に促進されることを示し3),主にGIPとGLP-1がインクレチンとして重要な機能を果たすことが確認された。

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る