炎症と栄養
慢性呼吸器炎症:COPDと栄養
栄養-評価と治療 Vol.28 No.3, 34-37, 2011
SUMMARY
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の栄養障害は骨格筋機能障害,骨粗鬆症,心・血管疾患などとともに重要なsystemic effectsである。その発症には全身性炎症が関与しており,栄養管理を行っていくうえで全身性炎症の抑制は重要で,薬物による炎症性メディエーターの抑制のみでなく,抗炎症作用に着目した栄養治療などの非薬物療法も含めた検討が必要と考えられる。
KEY WORDS
■慢性閉塞性肺疾患(COPD) ■栄養障害 ■Systemic effects ■全身性炎症 ■栄養治療
Ⅰ はじめに
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)はタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患で,呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示す。徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳,痰などがCOPDの特徴的な臨床症状であるが,COPDの病態は肺以外にも全身的影響(systemic effects)をもたらして並存症を誘発する(表1)。
COPDで栄養障害が高率にみられることが以前から知られているが,これは全身性炎症,骨格筋機能障害,心・血管疾患,骨粗鬆症などとともにsystemic effectsの1つである。COPD患者では安定期においても全身性炎症を反映した所見が認められ,全身性炎症は栄養障害,骨格筋機能障害,骨粗鬆症,心・血管疾患のリスクと関連している(図1)。
したがって,栄養障害をsystemic effects の1つとして管理,治療を行っていくうえで,全身性炎症を抑制することが重要である。本稿ではCOPDの栄養障害と全身性炎症について概説するとともに,抗炎症作用の観点からみた栄養療法の展望についても言及したい。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。