炎症と栄養
肝硬変における炎症性サイトカインとエネルギー代謝
栄養-評価と治療 Vol.28 No.3, 29-33, 2011
SUMMARY
肝硬変患者では,炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)-αは肝硬変の病態の進展と相関し活性化されている。また,活性化されたTNF-αは肝硬変患者のエネルギー代謝と相関を認め,たんぱく質・エネルギー栄養障害(PEM)の一因となっている。また就寝前軽食(LES)は,単に絶食時間を短縮しエネルギー飢餓状態を改善するのみでなく,TNF-αの低下をもたらし代謝状態の改善に寄与していると考えられる。
KEY WORDS
■肝硬変 ■腫瘍壊死因子(TNF)-α ■エネルギー代謝 ■非蛋白呼吸商(npRQ) ■就寝前軽食(LES)
Ⅰ はじめに
肝硬変では,たんぱく質・エネルギー栄養障害(protein energy malnutrition;PEM)が高頻度に出現し,予後やquality of life(QOL)に影響を及ぼす1)。肝硬変患者におけるPEMの頻度をエネルギー栄養障害は間接熱量計,たんぱく質栄養障害は血清アルブミン値によりそれぞれ評価すると,40%の患者がエネルギー栄養障害状態,70%の患者がたんぱく質栄養障害状態で,その両者を有するPEMは50%と報告されている1)。
肝硬変患者において間接熱量計によりエネルギー基質の燃焼比率をみると,糖質の燃焼低下・脂肪の燃焼亢進を認める。このような栄養代謝パターンは,肝硬変の重症度の進展とともにより顕著に認められ,予後に影響を与える1)。このエネルギー代謝異常は,肝臓の萎縮によるグリコーゲン貯蔵量の低下に加え,インスリン抵抗性やグルカゴン,カテコラミン,コルチゾールなどの血中濃度の増加により,生理的なエネルギー基質としての糖質の利用効率が低下することによるとされている。
しかしながら,食欲不振やエネルギー代謝に関与する炎症性サイトカインの腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)-αやアディポカインのレプチンとの関連については,十分に検討されていない。今回肝硬変患者においてTNF-α,レプチン濃度を測定し,エネルギー代謝との関係について検討した2)。
Ⅱ 方 法
肝細胞癌のない肝硬変患者24名(男:女=16:8名,年齢65±6歳,Child A:B:C= 9: 9: 6 名) と健常人12名(男:女=8:4名,年齢59±8歳)を対象とし,血液検査,身体計測,間接熱量計によるエネルギー代謝測定を施行した。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。