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栄養アセスメント ─基礎から臨床へ─

7.PNI

大原寛之東口髙志伊藤彰博

栄養-評価と治療 Vol.28 No.2, 61-64, 2011

SUMMARY
低栄養状態の患者に対して,侵襲の高い治療や手術などを行うと,重篤な合併症を発生する危険性がある。個々のどの静的・動的栄養指標に信頼性があるかを判定することは難しいため,重回帰分析の手法を用いた総合的栄養指標である予後推定栄養指数(PNI)が考案されている。臨床の現場でこのPNIを正確に活用するためには,疾患や病態および術式に適したPNIを選択することが重要である。

KEY WORDS
■ 栄養アセスメント ■ 術前評価 ■ 予後予測 ■ 総合的栄養指標 ■ 予後推定栄養指数(PNI)

Ⅰ はじめに

 栄養療法を施行する際には,栄養スクリーニング手法(SGA:主観的包括的栄養評価など)および客観的データ指標(体組成,生化学検査,間接熱量測定など)を用いて対象患者の栄養評価(栄養アセスメント)を的確に行うことがまず重要である。これらは疾患に関係なく,すべての入院患者に対して有効な手法といえる。なぜならば,エネルギー必要量・必要となる栄養素を推定することが可能となるからである1)。一方,原疾患に対して手術治療を行う必要のある患者が,すでに栄養不良状態に陥っている場合には,その侵襲の程度によっては栄養状態のさらなる悪化をきたし,術後合併症を併発して予後不良となる可能性がある。米国静脈経腸学会(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition ; ASPEN) のガイドライン2)においては,「消化管の大手術を受ける患者において,中等度ないし高度の栄養障害がある場合,手術を遅らせても問題がない場合には術前に7~14日間栄養療法を実施する」ことを推奨し,さらに欧州静脈経腸栄養学会(The European Society for Clinical Nutrition and Metabolism;ESPEN) においても, 術前の栄養管理を要するリスク基準を設けている3)(表1)。

しかし,これらのガイドラインでは種々ある栄養指標の何を基準として,またどのような根拠で手術のリスク判定を行うべきか曖昧であり,実際の臨床の現場に即したものとは言い難い。
 これに対して術前の栄養状態を解析して前もって手術危険度を判定する目的で,因子分析の1つである多変量解析の手法を用い1980年にBuzbyらが予後推定栄養指数(prognostic nutrition index;PNI)を考案した4)。このPNIは術前栄養状態を判定するために有用であるが,多種多様の栄養指標を手術の成功というアウトカムに対するそれぞれの関与を統計学的に取り上げ,総合的な栄養状態の判定を可能とした。すなわち総合的栄養評価法の概念を創出したのである。その後,わが国においても種々の総合的な栄養評価法が考案されたが,その原理などについての理解がないままに臨床現場で使用されている場合もあるように思われる。そこで本稿では,PNIの考案された経緯,対象とすべき疾患などについて概説したい。

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