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栄養アセスメント ─基礎から臨床へ─

5.免疫学的検査

稲葉毅福島亮治

栄養-評価と治療 Vol.28 No.2, 52-54, 2011

SUMMARY
免疫能と栄養状態を関連づけるメカニズムは,複雑で未解決の点が多い。しかし,実際の臨床例で末梢血総リンパ球数(TLC)やツベルクリン(PPD)反応などのT細胞系リンパ球の免疫能が栄養状態をよく反映することは明らかである。基礎疾患による変動が大きいのが栄養指標としての欠点であるが,免疫能低下は合併症発生などの問題に直結する点からも重要である。TLCを栄養状態把握の2次スクリーニング項目として用い,PPD反応などは詳細な検討を行うときに用いるのが実用的と考える。

KEY WORDS
■ 免疫学的栄養指標 ■ 末梢血総リンパ球数(TLC) ■ 遅延型免疫反応 ■ PPD反応

Ⅰ なぜ免疫学的検査が栄養状態評価に使われるようになったのか

 全身栄養状態の評価を行うにあたって,血中アルブミン値やコレステロール値が有用であることは,それぞれがたんぱく質や脂質そのものなので理解しやすい。それに対し,免疫能がなぜ栄養状態の指標となるのかは論理的には理解しづらい。
 しかし,栄養不良者が疾病,特に感染症に罹患しやすいことは,(微生物なんて概念すらなかった)古来の一般常識であったと言っても過言ではあるまい。筆者が検索しえた範囲でも,今からほぼ100年前には,栄養投与で感染症症状の改善をみたという文献報告がすでになされている1)。50年前頃からは,栄養状態の悪い旧植民地の住民に注目して,感染症と栄養不良の関連を考察した研究もずいぶんなされていたようである2)3)。残念ながら,開発途上国の小児の死亡の多くが栄養不良に起因する感染症であることは,程度の差こそあれ現在でもあまり変わっていない。
 免疫能を測定することで栄養状態を評価するという試みを誰が最初に始めたのかは筆者には検索できなかったが,前述の研究の蓄積の結果として自然発生的に出てきた発想と思われる。当然ながら,関連する文献の研究方法と結果は,「免疫指標Aと栄養指標Bが正相関した。したがって,AはBの指標になる」という疫学的なものが多くを占める。「免疫反応の過程Bが栄養成分Aで律速されている」などといった,メカニズムの解析から生まれてきた発想ではない。
 なぜ栄養低下が免疫能低下を引き起こすのかという問題は比較的以前から検討されている4)。近年の免疫学の著しい進歩に伴い,特定の栄養欠損と特定の免疫能低下との関連メカニズムには,明らかになってきたものも少なくない5)。しかし,全体としての蛋白エネルギー欠乏が,なぜ後述のような特定の免疫能低下をきたすのかの詳細な仕組みは,今も十分にはわかっていないというのが本当のところのようである。

Ⅱ 免疫学的指標のうち何が重要なのか

 低栄養は補体の減少もきたすし,重症化,慢性化した場合は免疫グロブリンも低値となる。しかし,前述のような長年の研究の結果,栄養指標として現在最も有用とされている免疫指標は,末梢血総リンパ球数(total lymphocyte count ; TLC)や,ツベルクリン(tuberculin purified protein derivative ; PPD)反応などの遅延型免疫反応といったT細胞系リンパ球の活動指標とされている。詳細な栄養学的検討を行うには,リンパ球幼若化反応測定やリンパ球サブセット解析(CD4/CD8比など)が有用とされているが,一般の栄養アセスメントで用いるのは現実的ではない(表1)。

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