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日本アミノ酸学会学術大会

日本アミノ酸学会第4回学術大会

田中秀幸

栄養-評価と治療 Vol.28 No.1, 64-65, 2011

 日本アミノ酸学会は,アミノ酸およびその関連化合物を研究対象として,栄養学,医学,薬学,農学,食品学,生理学,分子細胞生物学など広範囲分野の研究者や研究開発,さらにはアミノ酸製造に携わる方々が参加している学会です。

この半世紀,わが国のアミノ酸研究の中心的存在であった「必須アミノ酸研究委員会」が50周年を迎えたのを機に,これまでの蓄積をふまえ,さらにわが国のアミノ酸研究を活性化し,研究の裾野を広げる新時代の交流の場とすべく,「日本アミノ酸学会」として2007年4月に再出発したものです。登録会員数は年ごとに増加して250余名となりましたが,他の学会と比べてまだ規模が大きいとは言えません。本学会では,会員相互の研究交流,若手研究者の育成・顕彰を行うことを目的に学術大会(年次集会)およびシンポジウムをそれぞれ年1回開催しており,これらの成果は学会機関誌『アミノ酸研究』として発刊されています。
 今回の第4回学術大会は宇都宮大学の会員が中心となり,2010年9月16日(木)~17日(金)の2日間の日程で,栃木県鬼怒川温泉「ホテルサンシャイン鬼怒川」で開催されました(図1)。

以下にその概要を紹介します。
 第1日目は,基調講演「タンパク質アミノ酸の体内利用」(田中秀幸実行委員長)で開始され,続いて日本外科代謝栄養学会からお2人の先生をお招きして招待講演が行われました。「最新の知見に基づくがん外科治療におけるアミノ酸投与の意義」(土師誠二先生:近畿大学医学部外科学肝胆膵部門講師)では,消化器癌,肝硬変,肝切除などの術前栄養療法にアルギニン,グルタミン,分岐鎖アミノ酸などを取り入れた成績が紹介されました。「外科臨床におけるアミノ酸輸液の新展開─その可能性と実状─」(深柄和彦先生:東京大学医学部附属病院手術部准教授)では,外科周術期の栄養管理ではどうしても避けられない経静脈栄養の場合に,添加アミノ酸の薬理作用をも期待されるような新しい経静脈栄養製剤を開発していくことの重要性について解説されました。
 第2日目午前にはワークショップ「網羅的解析法を用いたアミノ酸代謝研究」が行われ,「マイクロアレイ解析から捉え直すセリン合成の栄養生理学的意義」(古屋茂樹先生:九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門システム生物学講座教授)では,セリン合成酵素3-ホスホグリセリン酸脱水素酵素(Phgdh)のノックアウトマウスとその胚から樹立した同遺伝子欠損繊維芽細胞株についてマイクロアレイによるトランスクリプトミクス解析が紹介されました。次いで「酵母の硫黄系物質代謝の網羅的解析と育種への応用」(吉田 聡先生:キリンホールディングス・フロンティア技術研究所)では,ビール香味改善のため製造工程で亜硫酸量を増加させ硫化水素量を減少させることが必要であり,酵母の硫黄代謝に関係する遺伝子のマイクロアレイ解析・メタボローム解析を行い,育種に役立てる実用上の研究例が紹介されました。「アミノ・メタボロームを用いた病態解析」(野口泰志先生:味の素株式会社健康基盤研究所)では,安定同位体・代謝フラックス解析や代謝物プロファイリング手法を駆使したアミノ酸による臓器代謝調節の研究例が紹介され,臨床における血中アミノ酸濃度による病態診断ばかりでなく,疾患メカニズムの理解や治療にも役立つ可能性について提示されました。さらに,「プロテオミクスによるアミノ酸代謝関連多機能性酵素の同定」(蕪山由己人先生:宇都宮大学農学部生物生産科学科応用生物化学准教授)では,ヒト悪性黒色腫(メラノーマ)転移期の新規分子探索に機能プロテオミクス解析手法を適用した研究例が紹介されました。メラノーマ転移期に発現誘導してくるMRDI(mediator of Rho dependent invasion)を同定し,このタンパク質がメチオニン代謝に関与するmethylthioribose-1-phosphate isomeraseであることを解明していく研究過程が紹介されました。
 2日目午後のシンポジウムでは,WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告書『Protein and amino acid requirements in human nutrition』(2007年)の邦訳『タンパク質・アミノ酸の必要量』が出版されたのを機会に,マクロ栄養素として「アミノ酸の第一義的役割は体タンパク質合成の素材である」との視点だけではなく,適正なアミノ酸摂取量とは何か,そこにある問題点とは何かを,議論していただきました。「アミノ酸必要量の考え方と問題点」(岸 恭一先生:名古屋学芸大学管理栄養学部管理栄養学科教授)では,アミノ酸必要量には,高齢者の必要量,アミノ酸許容上限摂取量,あるいは免疫能,長寿など生理学的機能の観点からの検討がまだ不十分であることが指摘されました。「指標アミノ酸酸化法によるタンパク質必要量の測定」(木戸康博先生:京都府立大学生命環境科学研究科栄養科学教授)では,アミノ酸酸化法の利便性が紹介され,「乳幼児のタンパク質・アミノ酸必要量」(川上 浩先生:共立女子大学家政学部教授)では,必要量に対する母乳に含まれる機能性タンパク質,分泌型IgAやラクトフェリンの位置づけ,およびトリプトファン,アルギニン,システイン,タウリンなどの生理機能が紹介されました。最後に「非必須アミノ酸の摂取の意義」(坂井良成先生:味の素株式会社ライフサイエンス研究所主任研究員)では,アミノ酸炭素骨格ではなくα-アミノ基供給としての非必須アミノ酸,特にグルタミン酸摂取の意義が解説されました。
 口頭発表は,7題が行われ,ポスターセッションは30題が発表されました(図2)。

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