第33回日本栄養アセスメント研究会発表演題より
メタボリックシンドロームとその予備群に対するアセスメントシート(Good Diet Study Sheet)を利用した生活指導効果
栄養-評価と治療 Vol.28 No.1, 45-48, 2011
SUMMARY
企業に勤める社員30名を対象に,アセスメントシートを利用し,生活習慣の改善を目的とした生活指導を試みた。シートは毎月送付し,回収,添削後,本人に返却,これを6ヵ月間継続した。開始時と6ヵ月後に測定した血中アディポネクチン濃度と腹囲は,メタボリックシンドロームおよびその予備群で有意に改善した。効率のよいセルフチェックと指導が可能である本ツールは多集団においても機能しうると考える。
KEY WORDS
■メタボリックシンドローム ■アセスメントシート ■アディポネクチン ■腹囲 ■内臓脂肪面積
Ⅰ 緒言・はじめに
現在,40~74歳の男性の2人に1人,女性の5人に1人がメタボリックシンドロームまたはその予備群である1)。2008年より,わが国では特定健診・特定保健指導制度が導入されたが,メタボリックシンドローム発症の基盤となる内臓脂肪の増加や,それに伴った低アディポネクチン血症に対する介入が重要であると考えられている。内臓脂肪が蓄積すると,肥大化した脂肪細胞からさまざまな悪玉アディポサイトカイン(脂肪細胞由来蛋白)が分泌され,インスリン抵抗性や動脈硬化の要因になることが報告されている2)3)。一方,アディポネクチンは脂肪細胞由来の善玉アディポサイトカインであり4),肝臓と骨格筋での脂肪酸燃焼を促進し,中性脂肪含量を低下させることによりインスリン抵抗性を改善したり,動脈硬化巣形成に関与する腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)-α の産生抑制や,血管内皮細胞と単球の接着を防止し動脈硬化の予防に寄与する。肥満および内臓脂肪の蓄積に伴って減少するが,アディポネクチンの血中レベルを維持または上昇させることにより,メタボリックシンドロームの改善や動脈硬化を予防することが期待される。
臨床的に実現するためには,栄養アセスメントを適切に実施しメタボリックシンドロームの有無を確認すると同時に,生活習慣を把握してその増悪因子の改善に努めることが重要である。今回,アセスメントシートを利用して,食事内容や運動習慣などの詳細な生活習慣を評価し,定期的に指導することにより,メタボリックシンドロームの指標の改善が可能かどうかを検討した。
Ⅱ 対象・方法
対象は企業に勤務するボランティア30名(平均年齢43.8±7.1歳,男性:23名,女性:7名)で,企業側と対象者に本研究への了解と協力の同意を得た。まず表1の診断基準を基に,メタボリックシンドロームの有無を判定した。
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※記事の内容は雑誌掲載時のものです。