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第33回日本栄養アセスメント研究会発表演題より

間接熱量測定による幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)における周術期の栄養管理

岡本陽香佐々木雅也仲川満弓丈達知子栗原美香中西直子岩川裕美赤羽理也星野伸夫塩見尚礼仲成幸谷徹山本昌

栄養-評価と治療 Vol.28 No.1, 39-44, 2011

SUMMARY
幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)の周術期に間接熱量測定を施行し,エネルギー消費量と呼吸商(RQ)を測定した。その結果,術後2週まで代謝亢進が継続し,Harris-Benedict式における基礎エネルギー消費量にストレス係数1.2を乗ずれば,適切な投与量が算出できることが明らかとなった。この結果から,PpPD術後の必要エネルギーは30~33kcal/kg/日と計算された。一方,RQには有意な変化はみられなかった。

KEY WORDS
■幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD) ■間接熱量測定 ■安静時エネルギー消費量(REE) ■呼吸商(RQ) ■栄養パラメーター

Ⅰ はじめに

 手術侵襲を受けると,患者の代謝動態は著しく変動する1)。術後はエネルギー消費量が大きく変動するため,周術期の栄養管理では,その変化に見合ったエネルギーを過不足なく投与することが重要である2)。特に消化器疾患の術後早期においては,十分量のエネルギーを食事から摂取するのは難しく,経腸栄養や静脈栄養を組み合わせてエネルギーを補給しなければならない。しかし,エネルギー投与量が過量(overfeeding)となることは有害であり,経腸栄養や静脈栄養を併用する場合には,overfeedingにも注意が必要である3)4)。必要エネルギー量の設定は, 一般的にHarris-Benedict式(HB式)5)から求めた基礎エネルギー消費量(basal energy expenditure;BEE)に活動係数,ストレス係数を乗じて算出する方法が用いられているが4)6),代謝変動の大きい周術期にこれらの係数の設定は容易ではない。一方,より正確に必要エネルギー量を設定する方法として,間接熱量測定により安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)を算出する方法があり,個々の症例に適したエネルギー投与量を求めることが可能である。
 現在まで,周術期を含むさまざまな病態を対象に,代謝変動が検討されてきたが6)-8),消化器癌手術のなかでも侵襲が大きいとされる術式である膵臓癌および胆管癌の周術期を対象とした報告は,いまだなされていない。
 近年,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(pylorus-preserving pancreatoduodenectomy;PpPD)は膵頭部領域腫瘍および中下部胆管癌の標準術式として認識されている9)-12)。そこで今回,間接熱量測定により PpPD周術期におけるREEと呼吸商(respiratory quotient;RQ)の変動について検討した。また,実際に投与されたエネルギー量と充足率および栄養パラメーターの推移についても検討した。

Ⅱ 方 法

1.対象患者

 2008年6月より,当院にて PpPD を施行した患者12例(男性7例,女性5例,平均年齢70.1±7.1歳)を対象とした。対象患者の疾患は,膵臓癌,胆管癌,膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN) がそれぞれ4例,5例,3例であった(表1)。

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