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症例による病態栄養講座

第68回 心不全・腎不全合併患者の栄養管理

西井大輔

栄養-評価と治療 Vol.28 No.1, 11-14, 2011

Point
心不全と腎不全の進行は,慢性炎症,異化亢進,食欲不振を引き起こすため,栄養障害の根底をなしていると考えなければならない。心腎関連の悪循環を形成する前に,適切な食事指導が重要である。過体重が認められれば減量を優先し,さらに食塩とたんぱく質の制限された食事管理が行えるように継続した食事指導が求められる。急性増悪期や感染症合併時などは,体蛋白異化が著しいため,患者の状況や治療に応じた,たんぱく質(アミノ酸)投与量を決定していく必要がある。

Ⅰ.はじめに

 慢性腎臓病(chronic kidney disease ;CKD)は心血管事故,死亡,入院のリスク要因として重要であることが明らかにされており,これはCKDに併発する貧血と心血管疾患が相互に関与して,悪循環が形成されるためと考えられる1)。また心血管疾患とCKDに起因する因子が関連し,食欲低下,代謝亢進,異化亢進を引き起こしやすく,栄養障害を合併している患者も多い。

Ⅱ.栄養障害の成因

 重症の慢性心不全では,食欲低下,消化吸収機能低下,末梢組織の低酸素血症,肝機能障害などから低栄養状態に陥り,心臓悪液質像を呈する。CKDステージ3~5Dでは,尿毒症,代謝性アシドーシス,インスリン抵抗性による筋蛋白異化と蛋白合成能の低下が認められ,副甲状腺ホルモン過剰分泌は,血管石灰化を促進し,慢性炎症を招く。
 慢性炎症は栄養障害ならびに動脈硬化の進展に深く関与し,透析患者の生命予後に強く関連することが報告されている2)。すなわち,心不全とCKDの進行は,低栄養の重大なリスクであることを認識する必要がある。

Ⅲ.心不全・腎不全での栄養管理

 心不全とCKDでは,病期にかかわらず塩分制限と肥満の改善はきわめて重要である。心不全患者では,利尿薬の使用やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系亢進により,カリウムとマグネシウムの尿中排泄増加と食欲低下により,低カリウム血症,低マグネシウム血症に傾きやすく,一方CKDでは貯留傾向に傾く。これらの電解質異常では,重症患者ほど不整脈を誘発しやすくなるので,電解質代謝に関与する薬剤ならびにIN-OUTのモニタリングを十分に行う。中心静脈栄養(total parenteral nutrition ; TPN) 開始時は,ブドウ糖(それに伴うインスリン)を急激に増やすと,低カリウム血症,低リン血症,低マグネシウム血症を引き起こすため,段階的に目標投与量へ上げていく。
 CKDステージ3~5では,必要エネルギー量確保を前提とし,たんぱく質制限が必要となる。食事によるリン摂取量は,たんぱく質摂取量と相関関係にある3)。透析期においては,セベラマー塩酸塩やシナカルセト塩酸塩などが使用可能となり,カルシウム・リンと副甲状腺ホルモンは,過去に比べコントロールが容易になってきているものの,保険適用は透析患者に限られる。そのため,低蛋白食に伴うリン制限と代謝性アシドーシスの改善は,血管石灰化抑制への役割は大きい。特にこの効果は,0.5g/kg IBW(ideal body weight)/日の低蛋白食に認められ,血清クレアチニン10mg/dℓのCKD患者においても,高窒素血症,代謝性アシドーシス,副甲状腺機能亢進症,貧血を良好な範囲でコントロールでき,栄養状態維持および透析導入遅延が可能であると報告されている4)。これは,たんぱく質制限を柱とした集約的治療により,腎機能保持と体内の恒常性をコントロールすることが,栄養状態維持に重要であることを示唆している。しかし,不十分な食事指導では,逆に栄養状態や病態の悪化を招く危険があるため,十分にサポート体制が整った施設での実施が望まれる。CKDステージ1~3においては,腎機能の程度に合わせて,食事基準に沿った管理を行うのが一般的である5)。
 感染症の合併や外科手術後などの侵襲下では,窒素バランスの維持が可能なたんぱく質確保を行う。また,心不全とCKDをもつ高齢患者の増加により,食事摂取量が著しく低下している場合も多い。こうした高齢患者は,感染症に罹りやすく,栄養管理に苦慮することになる。食事だけで必要栄養量を満たせないと判断したならば,速やかに経腸栄養(enteral nutrition;EN)・静脈栄養管理に移行ないしは食事と併用し,必要栄養量の確保に努める。
 よって,個々の患者の病期,合併症の有無,栄養投与ルート,社会的背景などを総合的に判断した適切な栄養サポートが必要となる。

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