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第3回 病態におけるステロイドホルモンの産生可視化

杉浦悠毅

The Lipid Vol.33 No.1, 4-10, 2022

副腎は小さな臓器でありながら,多様なステロイドホルモンを産生する。このために齧歯類の副腎皮質は層状構造をなし,各層が鉱質コルチコイド,糖質コルチコイド,および性ステロイドホルモンを合成する。一方で,われわれは以前から,ヒト成人の副腎皮質は層状というより“斑入り状”であり,粒状のアルドステロン産生細胞部位(aldosterone-producing cell cluster:APCC)が主な鉱質コルチコイド,すなわちアルドステロン産生部位であると提唱してきたが,実証には至っていなかった。
近年,私たちは微量の生理活性分子をも捉えるイメージング質量分析の高感度化を進め,ステロイドホルモンのin situイメージングを可能とした。本法を用いることにより,ヒト高血圧患者副腎に見出されたAPCCが,アルドステロンを過剰産生する様子を画像化することができた。さらに粒上のAPCCが,巨大なアルドステロン産生腺腫瘍(aldosterone producing adenoma;APA)に移行し,より多量のアルドステロンを産生する疾患病理も捉えることができた。一連の研究により,軽度の高血圧患者副腎に潜むAPCCが,重度の原発性アルドステロン症の病巣であるAPAの発生母地であることを明らかにした。

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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