特集 糖脂質代謝連関と老年病
Ⅰ. 基 礎 2.脂肪細胞の老化,褐色脂肪と心血管病
The Lipid Vol.31 No.2, 21-28, 2020
老化に伴い肥満や糖尿病,心不全,動脈硬化性疾患の罹患率が上昇する.加齢とともに細胞老化マーカー陽性細胞が全身の臓器に蓄積し,これらの加齢性疾患の中心基盤病態を形成するというエビデンスが蓄積されている.遺伝的モデルや薬剤を用いて老化細胞を選択的に除去すると,老化形質がリバースすることも最近複数報告されている.内臓脂肪は全身の恒常性制御に重要であり,細胞老化抑制および老化細胞除去により脂肪炎症が抑制され,全身の代謝異常も改善した.白色脂肪はエネルギーの貯蔵および内分泌器官として重要であるが,褐色脂肪は熱産生器官としての役割に加え,活発な代謝臓器としての側面を有する.褐色脂肪不全により肥満の病態が増悪することがわかっているが,細胞老化の意義に関しては未解明な点が多く今後の検討が待たれる.脂肪の恒常性維持は肥満や糖尿病,心不全,動脈硬化性疾患といった加齢関連疾患の病態抑制という点で重要と考えられる.
「KEY WORDS」褐色脂肪,白色脂肪,慢性炎症,細胞老化,インスリン抵抗性
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。