本企画のテーマでもある脂質の可視化は,近年,脂質分子の生体機能への役割が明らかにされるにつれて重要性を増してきている。脂質可視化の方法は多岐にわたるが,今回われわれが提示した画像は,質量分析イメージング(imaging mass spectrometry;IMS)という手法によって得られたものである。IMSは,位置情報を保持したまま観察対象をイオン化し,質量分析(massspectrometry;MS)を行う画期的な手法である1)。従来の標識化が必要である手法と比較して,MSは標識化の必要なしに,わずかな構造の違いしかない多種多様な脂質の解析が可能である。また,それに加えて,IMSでは生体組織における脂質の分布像も取得でき,脂質の生体内での役割を解き明かす上で重要な情報を多く得ることができる2)。IMSの詳しい解説はThe Lipid 2019年10月号にあるので文献2を参照していただきたい。本項では,IMSによる乳がん組織内の脂質の可視化についてわれわれが行った2つの研究を中心に解説したい。
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第4回 質量分析イメージングによるヒト乳がん組織内脂質の可視化
掲載誌
The Lipid
Vol.31 No.2 4-9,
2020
著者名
荒牧修平
/
華表友暁
/
瀬藤光利
記事体裁
特集
/
抄録
疾患領域
循環器
/
代謝・内分泌
/
栄養管理
診療科目
循環器内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
媒体
The Lipid
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。