<< 一覧に戻る

特集 いま,脂質がおもしろい ~若手研究者による最新の脂質研究~

3.肺高血圧に対する治療標的としての機能性脂質

守山英則遠藤仁

The Lipid Vol.31 No.1, 28-33, 2020

脂質の種類・構造・機能はきわめて多彩で,生理活性を有する機能性脂質は微量でも生体の恒常性維持や病態形成に重要な役割を担っている.肺動脈性肺高血圧症は肺小動脈が狭窄し肺動脈圧の顕著な上昇をきたす原因不明の難治性疾患であり,その中心的治療薬はこれまで機能性脂質prostaglandin I2であった.従来,本疾患の治療薬に期待される薬理作用は肺血管拡張作用と姑息的であったが,近年,疾患の進行を抑制する根本的な治療手段の開発が求められている.本疾患の病態形成には,炎症細胞による肺血管リモデリングが関与しており,炎症や線維化の制御はunmetclinical needsを満たす新規治療ターゲットとして注目されている.Leukotriene B4を含むプロスタノイドは強い生理活性を有するため,有効な治療薬として開発が進められた歴史があり,またHETEやEETなどの脂肪酸酸化物やリゾリン脂質も本疾患の病態と関与していることが知られており,介入すべき候補分子と考えられている.また,著明な心血管保護効果を有することで名高いn-3脂肪酸EPA/DHAに関してもその代謝物が固有のユニークな機能を有することが徐々にわかってきている.
本項では,これまで本疾患との関連が報告されてきた生理活性脂質について概説し,今後の機能性脂質の臨床応用に関して述べたいと思う.
「KEY WORDS」機能性脂質,prostaglandin I2,アラキドン酸代謝物,肺動脈性肺高血圧症,肺血管リモデリング

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る