宿主の消化管に共生する多種多様な腸内細菌が,宿主全身の恒常性維持に影響を及ぼすことが明らかとなっている.近年,その分子メカニズムとして腸内細菌由来の代謝物に着目した研究が盛んに行われている.腸管内では宿主-腸内細菌叢間の相互作用の織りなす非常に複雑な代謝系が構築されており,宿主と異なるユニークで多様な脂質代謝環境が形成されている.本稿ではこれまでの知見とともに,腸内細菌叢および宿主との相互作用によって形成される脂質代謝物群のリポクオリティについて,その多様性と宿主へ及ぼす生理作用を中心に概説する.
「KEY WORDS」腸内細菌,リポクオリティ,リノール酸代謝物,短鎖脂肪酸,胆汁酸