現在,日米欧のガイドラインでは,いずれも10年間の動脈硬化性疾患の発症・死亡リスクを予測し,その結果に基づいて治療方針を決定するのが主流である.米国ではNew pooled cohort ASCVD Risk Equationsで求めた動脈硬化性疾患の発症リスク,欧州ではSCOREチャートで求めた動脈硬化性疾患の死亡リスクを用いる.これらが脳卒中も含む広義の動脈硬化性疾患を予測するのに対し,日本では吹田スコアを用いて10年以内の冠動脈疾患の発症確率を予測する.これは日本人では脂質異常症と脳卒中の関連が弱いためである.一方,脂質の治療において米国はFire and Forget戦略かつスタチンのみを推奨しているのに対し,日欧では脂質の管理目標値を決めて治療するTreat to Target方式をとっている.脂質管理からみたきめ細やかさにおいては日本のガイドラインが最も優れており,次いで欧州,米国となるが,細やかな方式が予防上有用という確固たるエビデンスもなく,今後,費用対効果の検証なども必要である.
「KEY WORDS」絶対リスク,動脈硬化性疾患,Fire and Forget,Treat to Target,管理目標値