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特集 脂質代謝と心臓血管病:up-to-date

9. 糖尿病でみられる脂質異常症と心臓血管病

山下静也

The Lipid Vol.29 No.4, 72-84, 2018

糖尿病や耐糖能異常を有する患者がわが国では著しく増加しており,その管理と適切な治療は重要である.糖尿病合併症の発症・進展防止には厳重な血糖コントロールが重要で,それによって腎症,網膜症,神経症などの糖尿病細小血管症の発症・進展が阻止できることが報告されてきた.一方,日本人の糖尿病患者の死因は癌と感染症が多いが,心血管合併症(大血管症)も高頻度に認められ,しかも重症例が多く,その予後を規定する重要な因子である.したがって,糖尿病患者の管理の最大の目的は血管障害(虚血性心疾患,脳血管障害,糖尿病性腎症も含めて)の発症防止といえよう.
糖尿病における重症の粥状動脈硬化の発症基盤には,糖尿病に特徴的な血清リポ蛋白異常が強く関与している.1型糖尿病および2型糖尿病では,それぞれにリポ蛋白異常の特徴があり,特に高LDLコレステロール(LDL-C)血症,低HDLコレステロール(HDL-C)血症,高トリグリセライド(TG)血症などのリポ蛋白・脂質の量的異常に加えて,リポ蛋白の質的異常も重要である.本稿では糖尿病患者における脂質異常症の成因と病態,治療に関する最近の話題を紹介する.
「KEY WORDS」糖尿病,脂質異常症,レムナント,コレステロール吸収,糖化LDL

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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