血中脂質代謝の面からは, 内因性テストステロン(testosterone;T)は血中HDL低下の方向に作用していると考えられるが,種々の実験研究では,生理的レベルのTはむしろ,抗肥満,抗動脈硬化性に作用する可能性が示唆されている.アンドロゲンには,中枢性にはレプチンシグナルの増強効果作用,末梢では脂肪合成抑制,脂肪分解促進作用などが示唆されており,その濃度の低下や作用不全は肥満やインスリン抵抗性を惹起する.加齢に伴うテストステロンの低下は生活習慣病,特に内臓脂肪型肥満を基盤とするメタボリックシンドロームや糖尿病の発症や進展の重要な背景要因といえる.近年の種々の疫学データもこれを生理的濃度の範囲の血中Tはむしろ高いほど,死亡率を低下させ,動脈硬化症,糖尿病,肥満の発症頻度を低下させるとの成績が集積されつつある.
「KEY WORDS」テストステロン,動脈硬化症,メタボリックシンドローム
「KEY WORDS」テストステロン,動脈硬化症,メタボリックシンドローム