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症例検討 脂質代謝異常症への多角的アプローチ

第124回 不安定な体重は2型糖尿病発症リスクを高めるか?

児玉暁

The Lipid Vol.29 No.2, 98-101, 2018

分子生物学が主流である現在においても,数多く存在する糖尿病発症危険因子を一つひとつ解き明かす疫学研究は,糖尿病予防診療の発展の礎となるきわめて重要な基礎研究である.肥満が古くから知られる2型糖尿病(以下,糖尿病と略記)発症の最大危険因子の一つであるが1),肥満に加えて,体重変化も糖尿病発症リスクを修飾する要因であり,成人における体重増加は,肥満度とは独立して,糖尿病発症リスクを高めることが知られている2)
逆に減量(肥満のコントロール)は糖尿病予防に重要であり,体重減少量と糖尿病発症リスク低下度との間には相関関係が認められる3).しかしながら,一般に,減量した体重を維持することはきわめて困難であり,減量した体重が元に戻る(体重再増加,weight regain)ことがほぼ不可避的であり4),減量と再増加を繰り返す(ウエイトサイクリング,weight cycling)ことで結果的に大きな体重変動(weight fluctuation)が生じる.このような不安定な体重自体が,肥満の有無にかかわらず,心血管疾患をはじめとする多くの疾病発症リスクを高めることが示唆されてきた5).しかしながら,糖尿病に関しては,大きな体重変動がその発症リスクを高めるかどうかについては一定した疫学的知見が得られていない. 減量が不可避的に体重再増加を伴うことを鑑みれば,体重変動が糖尿病発症関連因子であるかという問題は,糖尿病予防指導において, 減量を推進すべきであるかどうかという根源的な問題を含んでいるため,糖尿病予防診療にとっても,この問題について一定の結論を下す(エビデンスを示す)ことは,きわめて重要であると考えられる.
本稿では, エビデンスの確立に重要な研究手法の一つであるメタ解析手法を通じて,体重変動と糖尿病発症との関連性を検討したこれまでのすべての疫学データを網羅的に探索し,この関連性の有無(定性的),大きさ(定量的)について評価を行った研究を紹介する6)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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