肥満症に合併する脂質異常症と脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患;NAFLD)は,ともに肥満症の診断基準に必須の健康障害に含まれている.これらは通常の(肥満症に起因ないし関連しない)脂質異常症やNAFLDとは異なる特徴的な病態があり,その把握が治療戦略を立てる上で重要である.いずれも減量を見据えた食事運動療法が治療の中心となるが,脂質異常症では必要に応じてスタチンやフィブラート系薬などの薬物療法を併用する.NAFLDについては確立した治療法は現時点ではなく,背景にある生活習慣病の是正が原則となる.また,NAFLDの約10%を占める非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝硬変や肝細胞癌に進展することがあり,その予防対策も忘れてはならない.
「KEY WORDS」インスリン抵抗性,内臓脂肪型肥満,高TG血症,低HDL血症,NAFLD,NASH