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症例検討 脂質代謝異常症への多角的アプローチ

第121回 mTOR阻害薬エベロリムス投与を契機に糖尿病ケトアシドーシスを発症した症例

久保典代髙原充佳

The Lipid Vol.28 No.3, 90-94, 2017

哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin;mTOR)阻害薬は,移植医療で広く使われている免疫抑制剤であり,細胞増殖や血管新生を抑制することで既存薬と比べ拒絶反応や移植後合併症をより減らす効果が期待されている.mTOR阻害薬は,細胞質内のFK506結合蛋白12と複合体を形成し,その複合体がmTORと結合してキナーゼ活性を抑制することで,T細胞,B細胞, 血管平滑筋細胞の細胞分裂周期をG1期で停止させ,細胞増殖を阻害する1).エベロリムスはマクロライド系免疫抑制薬として開発されたシロリムス誘導体で,日本で初の経口mTOR阻害薬である.現在, 心臓移植や腎臓移植だけでなく,根治切除不能または転移性の腎細胞癌や神経内分泌腫瘍などの治療でも使用されている.移植領域では,エベロリムス投与による急性拒絶反応の低下,抗腫瘍効果,移植臓器の線維化抑制,血管再生の抑制,サイトメガロウイルス・EBウイルス感染の防御などさまざまな効果が期待されている2, 3)

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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