特集 肝疾患と脂質代謝
7. アルコール性脂肪肝と脂質代謝異常
The Lipid Vol.28 No.2, 57-64, 2017
過剰飲酒により生じる脂質代謝異常として,脂肪肝,高中性脂肪血症,高HDL コレステロール血症があげられる.肝臓でのアルコール代謝に基づく中性脂肪合成・貯留の亢進がこれらすべての根本要因と理解されているが,そこに至る経路は非常に複雑で,いまだ究明の途上にある.現在,研究標的の主なものだけでも,転写因子,サイトカイン,脂質滴関連蛋白,リポファジー/ オートファジーときわめて多岐にわたる.中性脂肪の肝内貯留と血中分泌の亢進という,相反する事象を共通機序ですべて説明することは難しい.また高HDLがもたらす抗動脈硬化作用にも議論が分かれるなか,アルコール飲料の「百薬の長」との位置付けは怪しくなりつつある.
「KEY WORDS」アルコール性脂肪肝,高中性脂肪血症,高HDL血症,脂肪滴関連蛋白,リポファジー
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