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巻頭言

LDL治療の新展開とHDLのパラダイムシフト

池脇克則

The Lipid Vol.28 No.1, 1, 2017

数々の疫学調査においてLDLが心血管疾患(CVD)の正の危険因子,HDLが負の危険因子であることが示されてきた.遠藤章博士によって発見されたHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は強力なLDL-コレステロール(C)低下作用によって脂質異常症治療の中心的な薬剤となった.同時に国内外で行われた介入試験でCVD発症を約3割抑制することが明らかとなり現在世界で4,000万人近くの人々が内服している.したがって動脈硬化予防のための残された課題は,スタチン治療によっても防げない約7割の残存リスクをいかに軽減するかである.相対リスクの低下はLDL-C低下絶対量に比例することから,より強力なLDL低下治療がひとつのアプローチである.小腸コレステロール阻害薬であるエゼチミブはスタチンとの併用でLDL-Cを50㎎/dLまで低下させてスタチン単独で70mg/dLまで低下させるよりも有意にCVD抑制効果を示している.そして,2016年の最大の話題はPCSK9阻害薬の臨床応用であろう.

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

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