特集 腸内細菌と脂質
特集にあたって
The Lipid Vol.27 No.2, 18-19, 2016
「腸内細菌と私たちのかかわり合いをどう捉えるのか」長い人類の歴史のなかで,「感染症」はわれわれにとって常に最も大きな「敵」であった.しかし,1928年,フレミングがブドウ球菌の培養実験中に偶然に混入したアオカビから細菌の生育を阻止する物質,ペニシリンを発見し,1940年,フローリーとチェインがその単離に成功して以来,感染症の猛威はようやく抑えられるようになった.抗生物質の発見は,人類の寿命延長に大きく貢献したが,人々は長く生きられるようになったその代償に,現在国連ならびにWHOが最も注目している疾患群,「非感染性疾患(non-communicable diseases; NCDs)」が,取って代わるようになった.NCDsは,いわゆるかつてはわが国では成人病,そののちは生活習慣病と称される,肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症など,さらには,癌や慢性閉塞性呼吸器疾患など多彩な疾患を含む概念である.
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