「Summary」血管平滑筋細胞は,分化型形質(収縮型)と脱分化型形質(合成型)の2つの形質に大別され,分化型から脱分化型への形質変換は,動脈硬化や血管形成術後の再狭窄病変の形成に重要な役割をもつ.最近までに,石灰化病変には,骨形成にかかわる遺伝子が発現していることが示され,骨形成と類似した能動的な機序が働いていることが明らかにされてきた.そして,血管壁にて石灰化する細胞の起源については,ほとんどが中膜平滑筋細胞であることが実証されている.したがって,血管石灰化は,血管平滑筋細胞から骨芽細胞への形質変換の1つと捉えることができる.血管石灰化の分子機序の解明は現在の臨床血管医学の主要課題として注目されている.
「Key Words」血管平滑筋細胞,転写因子,内膜石灰化,中膜石灰化