[Summary]糖質コルチコイド, 性ステロイド(テストステロン, エストロゲン)に代表されるステロイドホルモンは, これまで性腺・副腎系の病態との関連性が重視されてきたが, 脂質代謝を含む広範な内分泌代謝系に影響を与えることが知られるようになってきた. ゆえにステロイドホルモンの作用異常は脂質異常症治療に対しても少なからぬ影響を与える. 本稿では, ステロイドホルモン作用異常につき概説し, 脂質異常症発症とその治療に対する影響と, 診療上の留意点につき概説する. 「はじめに」ステロイドホルモンの作用異常は従来, 副腎・性腺系疾患とのかかわりが重視されてきたが, 最近の研究により一般的な生活習慣病全体の背景要因としての役割が判明しつつある. 例えば糖質コルチコイドの過剰症であるクッシング症候群(Cushing syndrome)では高血圧や糖尿病に加えて脂質異常症をきたすことはよく知られている1). また, 近年, 潜在型クッシング症候群(Subclinical Cushing's syndrome; SCCS)が, 内臓脂肪蓄積と, 高中性脂肪血症, 低HDL血症, 高血圧, 耐糖能異常を主徴とするメタボリックシンドロームの病態形成に深くかかわることも明らかにされてきている.
「Key Words」脂質異常症,ガイドライン,クッシング症候群,メタボリックシンドローム,糖尿病