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急性冠症候群研究の最前線

急性冠症候群の薬物治療

坪井秀太宮内克己

The Lipid Vol.22 No.3, 51-61, 2011

Summary
 急性期冠インターベンションにより急性冠症候群(ACS)の予後は改善したが,急性期および慢性期に至る薬物治療が基礎にあることを忘れてはならない.ACS患者に用いる基本薬剤(アスピリン,チエノピリジン系,β遮断薬,スタチン,ACE-I,ARB)の効果は大規模臨床試験やメタ解析で立証されている.しかし,患者背景,重症度に応じた使用薬剤の種類,組み合わせ,投与量,投与期間などに関するエビデンスは十分ではなく,さらなる検討が必要である.

Key words
●acute coronary syndrome(ACS) ●ST elevation myocardial infarction(STEMI)

はじめに

 急性期冠インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)技術の普及・進歩により,急性心筋梗塞の予後は改善した.ACSに対する薬物治療の効果はPCI導入前より検証され,急性期から慢性期まで薬物治療なくしてACSの予後改善が不可能であることも忘れてはならない.本稿では日常診療で広く使用されているACS治療の基本となる薬物治療について概説する.

アスピリン

 アスピリンはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼの阻害を介してトロンボキサンA2産生を抑制することで抗血小板作用を発揮する.アスピリンの心血管イベント予防効果は1988年のISIS-2が初めての報告である1).17,187例の急性心筋梗塞患者を対象にアスピリン投与を行い,発症1ヵ月以内の死亡・心筋梗塞の発生率を25%低下させ,二次予防におけるアスピリンの有用性が示された.その後,アスピリンの有用性を示す臨床研究が広まり,Antithrombotic Trialists’(ATT) Collaborationはアスピリンの効果をメタ解析としてまとめた2-4).43,000人/年の追跡で二次予防におけるアスピリン投与群は非投与群と比較し,死亡・心筋梗塞発症に対するハザード比は0.81(95%信頼区間 0.75-0.87 p<0.0001)であり,さらに有害事象である脳出血の有意な増加はなかった.1994年,2002年,2009年のいずれのATTのメタ解析でもアスピリンの二次予防効果は証明され,強固な証拠に裏付けられた急性冠症候群基本治療薬であり,いかなる国,年代を問わずガイドライン上アスピリン投与はクラスⅠに位置付けられている.

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