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急性冠症候群研究の最前線

急性冠症候群のバイオマーカー

久米典昭

The Lipid Vol.22 No.3, 37-44, 2011

Summary
 冠動脈の粥状動脈硬化プラークの破綻あるいはびらんと,続発する血栓形成が急性冠症候群を発症させる.酸化LDLとその受容体LOX-1は脂質の蓄積と催炎症,血管壁細胞死,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の産生などを誘導しプラーク破綻に導く.白血球から産生されるミエロペルオキシダーゼ(MPO)は,酸化ストレスを惹起させる.急性冠症候群の急性期診断あるいは発症予測のバイオマーカーとして,虚血による心筋傷害を反映するトロポニン,H-FABPに加え,プラーク破綻や不安定化を反映するsoluble LOX-1(sLOX-1),MMP-9,MPO,炎症の指標である高感度CRP,ペントラキシン3 (PTX3)などの有用性が示されている.

Key words
●トロポニン ●MPO ●MMP-9 ●PTX3 ●soluble LOX-1

はじめに

 急性冠症候群のバイオマーカーとして認知され,臨床の現場で利用されるためには,臨床データに基づく確固たるエビデンスの存在のみならず,その血中レベルが上昇するメカニズムが明らかである必要があると考える.本稿では,バイオマーカーの中でも,心筋傷害を反映するバイオマーカーに加え,粥状動脈硬化プラーク破綻・不安定化を反映すると思われるものの概略を紹介する.

心筋傷害を反映するバイオマーカー

 急性冠症候群の中でも,急性心筋梗塞に限れば,そのゴールデン・スタンダードのバイオマーカーは,トロポニンTおよびトロポニンIとされ,その診断基準にもなっている1).しかしながら,これらは,傷害された心筋を反映するバイオマーカーであり,虚血による心筋傷害がいまだ十分にはみられない発症早期には陽性とならない場合がある.特に,ST上昇を伴わない不安定狭心症の場合には,十分な時間を経ても陰性のままのことも多い.心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は,その値の上昇がトロポニンTよりも早い時期からみられるといわれるが,心筋傷害を反映するものであり,その性格はトロポニンと類似であり,感度が上昇した分,特異度が低下する.最近になり,トロポニンTおよびトロポニンIの高感度な測定法が開発され,発症3時間以内の急性期での急性心筋梗塞の診断感度が従来のトロポニンの測定法と比べ格段に向上したと報告されている
が2, 3),トロポニンの値は心不全や心筋炎などの病態でもいくらか上昇するため,心不全などを含めたほかの心疾患との鑑別診断においての有用性(至適な診断カットオフ値)については,さらなる検討を待つ必要があるかもしれない.

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