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遺伝子操作実験動物-2 ニューロメジンU ノックアウトマウス

森健二児島将康

The Lipid Vol.22 No.3, 4-9, 2011

はじめに
 ニューロメジンU(neuromedin U;NMU)は,多様な生理活性を有する神経ペプチドで,そのノックアウトマウスは脂質代謝異常を伴った肥満を発症する.本稿では,摂食・エネルギー代謝調節におけるNMUの役割と,これに関連したNMUノックアウトマウスの特徴を解説する.

NMUと摂食・エネルギー代謝調節

 ニューロメジンとは,平滑筋の収縮活性を指標として単離された一連の神経ペプチドを指し,その名には神経系の伝達・調節にかかわる可能性をもつ物質(neuronal mediator)という意味が込められている.なかでもNMUは,1985年にラット子宮の収縮活性をたよりにブタ脊髄より初めて単離され,子宮(uterus)の頭文字を取って命名された1).現在までに哺乳類,鳥類,両生類,魚類といった幅広い動物種で同定されている2, 3).マウスでは23アミノ酸残基からなるペプチドで,C末7アミノ酸残基とC末端のアミド化修飾が活性部位であり,この構造はすべての動物種間で非常に高度に保存されている(図1).

また,同一の活性部位を有するが別の遺伝子から産生される関連ペプチドとしてニューロメジンSが存在する4).NMUの遺伝子レベルでの発現は,下垂体と腸管で特に強く,次いで中枢神経系にて観察される5).NMUには2種類の受容体が存在し,構造的特徴から共にG蛋白質共役型受容体に分類される5,6).それぞれの発現する組織は大きく異なり,1型は主に末梢組織で,2型は中枢神経系で強く発現している.
 視床下部では,NMUは弓状核,視交叉上核,腹内側核と背内側核で7),2型受容体は弓状核,室傍核,第三脳室上衣層と腹内側核周辺で発現している7).これらの神経核の多くは中枢性摂食調節で重要な役割を果たすため,摂食調節機構へのNMUの関与が示唆される.実際にNMUを自由摂食ラットへ脳室内投与すると,用量依存的に暗期摂餌量と体重が減少する8, 9)(図2).

絶食ラットでも同様に摂食活動を抑制する.また,げっ歯類のほかにウズラ,ニワトリ,金魚を使った実験でもNMU中枢投与による摂食抑制が示されている3, 10, 11).この機能に加え,中枢のNMUは運動量と酸素消費量を増加させ,さらに深部体温を上昇させることによりエネルギー代謝を亢進させる9).NMUの脳室内投与は,摂食抑制ペプチドであるαメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)と副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)をそれぞれ産生する視床下部の弓状核と室傍核を活性化する12).同時にそれぞれの遺伝子発現量も増加するため,NMUによる摂食抑制におけるα-MSHとCRHの関与が示唆される13).また,CRHノックアウトマウスにNMUを投与すると摂食抑制が観察されないことから14),CRHがより重要であると考えられる.

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