はじめに  中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV)は,2008年,わが国の心臓移植待機症例より見出された新規疾患単位であり,心筋細胞,冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する結果,重症心不全,不整脈をきたす難病である1, 2).これまでのところ明らかなTGCVの原因遺伝子は,細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるadipose triglyceride lipase(ATGL)である3, 4).2009年より,厚生労働省難治性疾患克服研究事業として,TGCV研究班が立ち上がり,本症の1日も早い克服を目指して,その疾患概念の確立,診断法,治療法の開発が進められている.