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症例検討 脂質代謝異常症への多角的アプローチ

98 中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV)

平野賢一

The Lipid Vol.22 No.2, 94-97, 2011

はじめに
 中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy;TGCV)は,2008年,わが国の心臓移植待機症例より見出された新規疾患単位であり,心筋細胞,冠状動脈硬化巣に中性脂肪が蓄積する結果,重症心不全,不整脈をきたす難病である1, 2).これまでのところ明らかなTGCVの原因遺伝子は,細胞内中性脂肪分解の必須酵素であるadipose triglyceride lipase(ATGL)である3, 4).2009年より,厚生労働省難治性疾患克服研究事業として,TGCV研究班が立ち上がり,本症の1日も早い克服を目指して,その疾患概念の確立,診断法,治療法の開発が進められている.

症例報告

 わが国では,心臓移植のドナーは,絶対的に不足し,多くの患者が待機中に重篤な合併症をきたしたり,死亡したりしている.そのため,拡張型心筋症など原因不明の疾患の原因を解明し,それに対する治療法を開発することの重要性はいうまでもない.われわれは,最近,心臓移植待機患者の中から特異な2症例を経験した.
 いずれも30~40歳台の中年男性.心不全の発症後,わずか数年で心臓移植が必要となった.検査所見としては,末梢血多核白血球の空胞化(Jordans’ anomaly)が,特徴的であった(図1A).

血清脂質やカルニチンレベルは,正常値を示した.臨床的には,心陰影の拡大,両心腔の拡大と両室の収縮不全など拡張型心筋症様であった.心筋生検では,心筋の脱落,線維化と残存心筋細胞内には,オイルレッドO陽性の空胞を多数認めた.
 心臓移植の際に,摘出した心臓は,脂肪蓄積のため,全体に白色調であった.心筋生検の結果と一致して,心筋細胞は減少し,脂質蓄積により空胞化していた(図1B).冠動脈には求心性の動脈硬化性病変がびまん性に認められ,内皮細胞,内膜,中膜,外膜と血管壁の全層にわたり脂質の蓄積を伴った細胞が観察された(図2).

動脈硬化巣に蓄積している脂質を分析したところ,コレステロールではなく,トリグリセライドの蓄積であった(図3).

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