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新しいマクロファージ

Ⅱ.病態 マクロファージの分泌する蛋白質AIMの機能とメタボリックシンドローム

新井郷子宮崎徹

The Lipid Vol.22 No.2, 65-71, 2011

Summary
 Apoptosis inhibitor of macrophage(AIM)はマクロファージが特異的に発現する分泌蛋白質である.われわれがマクロファージ自身のアポトーシス抑制機能をもつ蛋白質としておよそ10年前に同定したが,近年,発現誘導機構や新しい機能の解明が進んだことで,AIMがメタボリックシンドロームにさまざまな角度から非常に深く関与していることが明らかになった.本稿は,AIMがそのアポトーシス抑制機能により病態に関与する動脈硬化,および,最近新たに発見した脂肪細胞におけるlipolysis機能について紹介することで,メタボリックシンドロームにおけるAIMの役割について概説する.

Key Words
●AIM ●メタボリックシンドローム ●慢性炎症 ●lipolysis

はじめに

 近年,肥満から始まり糖尿病や動脈硬化へと進展するメタボリックシンドロームは,単なるメタボリズムの異常ではなく,その根底に慢性炎症を病態の基盤とすることが大きくクローズアップされている.例えば,慢性炎症を伴う内臓肥満が脂肪組織のリモデリングと機能異常を引き起こすことが糖尿病を始めとした疾患群の礎となることが知られており,また動脈硬化症は病態そのものが炎症反応であるといわれているほど,炎症がその病態進行に深くかかわる疾患である.マクロファージはこれらの病態進行に深くかかわる細胞であるが,周知の通り,その根幹となる機能は免疫細胞としての生体防御である.局所において異変を察知し,炎症性サイトカインやケモカインといったさまざまな液性因子を産生することで炎症像を作り上げていく.
 しかしながら,メタボリックシンドロームの発症はいずれも過剰なカロリー摂取,偏った栄養摂取,運動不足がもともとの要因である.にもかかわらず,マクロファージは何を察知して炎症を誘起するのだろうか.本稿では,生活習慣と炎症の間に介在する重要なファクターとして,マクロファージが特異的に発現する分泌蛋白質であるAIMの機能について,メタボリックシンドロームを中心に解説する.

AIMとは

 AIMは分化成熟したマクロファージが特異的に産生する三つのscavenger receptor cysteine-rich(SRCR)ドメインからなる分泌型蛋白質である.1999年に筆者らが同定し,胸腺細胞やマクロファージ自身のアポトーシスを抑制する機能をもつことからApoptosis Inhibitor of Macrophage(AIM)と命名した(ほかにCD5L,Spα,Api6などの呼称がある)1-3).AIMは分泌型蛋白質であるため,そのアポトーシス抑制機構はおそらく受容体を介したものであると考えられるが,Fasや放射線,ステロイド,または細菌感染,細胞ストレスなど,さまざまなタイプのアポトーシス誘導に対し抵抗性を示すことからも1, 4),特定のアポトーシス誘導シグナルを阻害するというよりも,細胞の生存能力を高めているという見方の方が相応しいかもしれない.詳細な分子メカニズムは現在解析中である.
 発見当初AIM/マウスを作製・解析したが,通常状態で健康であり,また当時はAIMの発現制御メカニズムも未解明であったことなどから1),AIMの生理的な意味としての重要性は不明であった.ところが,近年,メタボリックシンドロームが大きく現代社会問題としてクローズアップされるとともに,AIMがメタボリックシンドロームにおいて非常に重要な役割をもつ分子であることが次々に明らかになった.主なものは以下の発見である.

①AIMの発現制御メカニズム:核内受容体であるliver X receptor(LXR)/retinoid X receptor(RXR)ヘテロ二量体の活性化により,AIMの発現が強く誘導される3-5).

②AIMの血中濃度:AIMは分泌型蛋白質であるため通常状態でも血中に存在するが,肥満の進行に伴い血中濃度が急激に上昇する(マウスの場合,高脂肪食負荷による肥満誘導で約5倍)6).

③AIMの新たな機能と標的細胞:AIMは脂肪細胞に取り込まれて脂肪分解(lipolysis)を誘導する6).

 ①は,AIMの発現制御についての初めての発見であり,AIMとメタボリックシンドロームの関連性を見出すきっかけとなるものであった.LXRは酸化コレステロールの分解物であるオキシステロールをリガンドとして活性化されるため,動脈硬化巣の泡沫化マクロファージは常にLXRが強く活性化されている.そのため,動脈硬化巣マクロファージはAIMを非常に強く発現している.動脈硬化におけるAIMの役割については次の項目で解説する.また,②,③に関しては最近明らかになったことであり,内臓肥満の慢性炎症の根本原因がAIMであることを示す非常に重要な知見である.後半はこれについて最新のトピックを紹介する.

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