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新しいマクロファージ

Ⅱ.病態 M1/M2マクロファージと病態

藤坂志帆薄井勲戸邉一之

The Lipid Vol.22 No.2, 53-57, 2011

Summary
 肥満によるインスリン抵抗性の発症において重要な役割をもつ脂肪組織マクロファージは,単一の細胞集団ではない.悪玉的な性格を有するM1マクロファージ以外にインスリン感受性と相関が強い,善玉的なM2マクロファージが存在する.これらマクロファージはさまざまなインスリン感受性状態においてその分布パターン,数,比率をダイナミックに変化させる.複雑で多様なこれらM1/M2マクロファージの機能や制御機構を明らかにすることがインスリン抵抗性の新たな治療戦略のターゲットとなりうると考えられ,さらなる発展が期待される.

Key Words
●肥満 ●インスリン抵抗性 ●内臓脂肪 ●マクロファージ ●炎症

はじめに

 現代社会において,その患者数が爆発的に増加しているメタボリック症候群の発症基盤には,インスリン抵抗性が存在する.一般にインスリン抵抗性は,肥満に伴って内臓脂肪組織に浸潤したマクロファージなどから炎症性サイトカインが産生されることによって誘導される,慢性の炎症状態という概念で認識されている1).したがって,インスリン抵抗性発症において脂肪組織マクロファージはいわゆる「悪玉」として捉えられてきた.しかし,近年脂肪組織には,M1/M2マクロファージとよばれる少なくとも2種類のマクロファージが存在することが報告され2),インスリン抵抗性の病態との関連について活発に研究が進められている.本稿では肥満内臓脂肪組織におけるこれらM1/M2マクロファージの特徴や病態への関与について概説する.

脂肪組織のM1/M2マクロファージ

 末梢血液中の単球は各組織においてさまざまな環境因子,誘導因子の影響を受けてマクロファージなどに分化する.マクロファージへの分化のパターンは大きく分けて2種類あることが知られていた.一般にM1マクロファージは,古典的活性化マクロファージ(classically activated macrophage)ともよばれ,主にLPSやIFN-γなどのTh1サイトカインから誘導される.炎症性サイトカインを高発現し,T細胞の活性化や酸化ストレスの産生に関与する.一方,M2マクロファージは,選択的活性化マクロファージ(alternatively activated macrophage)とよばれ,Th2サイトカインによって誘導される.IL-10などの抗炎症性サイトカインを高発現し,M1マクロファージによる炎症性サイトカインや酸化ストレス産生を抑制する方向に働く.T細胞の増殖抑制や組織修復などにも関与すると考えられている.M2マクロファージはIL-4,IL-13によって誘導されるM2a,免疫複合体などによって誘導されるM2b,IL-10によって誘導されるM2cに分類されることが知られている(図1).

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