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脂質研究の過去・現在・未来―創刊100号を迎えて―
(Up To Date)動脈硬化における血管・血球細胞応答
―仮説から新規創薬へ―
掲載誌
The Lipid
Vol.21 No.4 76-83,
2010
著者名
横出正之
記事体裁
特集
/
全文記事
疾患領域
循環器
/
代謝・内分泌
診療科目
一般内科
/
循環器内科
/
糖尿病・代謝・内分泌科
/
老年科
媒体
The Lipid
「Summary」動脈硬化性疾患発症に高LDLコレステロール血症に代表される脂質代謝異常は最も重大な要因となるが, 粥状動脈硬化病変の成立, 進展には動脈壁における細胞間相互応答が深くかかわっている. なかでも単球に起源を有するマクロファージは病変の初期から進行病変の形成にまでかかわることが明らかになってきた. 単球は血管内皮細胞の活性化に伴い, 内皮下層に遊走したのちマクロファージへと分化し, 酸化LDLなどの変性LDLを取り込み, 泡沫細胞に変化し, 動脈硬化初期病変である脂肪線条の主要構成細胞となる. また, マクロファージは種々の生物学的刺激に反応して多彩な液性因子を分泌し, 血管内皮細胞, 平滑筋細胞などとの情報ネットワークの中枢的役割を演じる. さらに病変後期には細胞死や細胞外基質の分解にかかわることでプラークの性状にも重要な役割を演じていると考えられる. これらの成果はスタチンの大規模臨床試験の結果の説明根拠にもなったほか, 新たな創薬の標的開発にもつながろうとしている. 本稿では動脈硬化発症進展の分子機構に関する最近の知見と治療方法の開発を目指した創薬の可能性につき述べる.
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。