<< 一覧に戻る

脂質研究の過去・現在・未来―創刊100号を迎えて―

(100号によせて)私の「ヒト動脈硬化研究」をふりかえって

上田真喜子

The Lipid Vol.21 No.4, 14-15, 2010

私の「ヒト動脈硬化研究」のスタートは, 平滑筋細胞であった. 1977年, Gruntzigにより初めて施行された経皮的冠動脈形成術(PTCA)はその後, またたく間に世界中に広まり, わが国でも, 1980年に最初のPTCAが開始された. 以来, PTCAは爆発的に普及し, その後の虚血性心疾患の治療に革命的な影響をもたらすこととなった. しかし一方では, PTCAは「PTCA後再狭窄」という新たな臨床的問題を提起することとなった. 1984年, オランダのアムステルダム大学医学部病理学教室Becker教授のもとでの心臓血管病理学研究の留学を終えて帰国した私は, 同年, PTCA後再狭窄例の病理学的検索を依頼され, 施行した. 顕微鏡を通して初めて出会ったヒトPTCA後再狭窄部位の「新生内膜の高度増殖像」は, それまでのヒト冠動脈の病理学では全く知られていなかった現象であった. それはまさしく, ヒト動脈壁における細胞組織反応のダイナミズムを直接的に示す像であり, 従来から硬化・線維化・石灰沈着などのいわゆる「古い変化」が強調されがちであったヒト動脈硬化病変においても, 広範な内皮細胞傷害がひき起こされた場合には, 平滑筋細胞の増生を基盤とした「新しい変化」が実際にヒト動脈壁で起こりうると想定するのに十分な像であった.

記事本文はM-Review会員のみお読みいただけます。

メールアドレス

パスワード

M-Review会員にご登録いただくと、会員限定コンテンツの閲覧やメールマガジンなど様々な情報サービスをご利用いただけます。

新規会員登録

※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

一覧に戻る