特集 糖尿病と肝臓
NASH/NAFLDのメカニズム ①インスリン作用からみたメカニズム
Diabetes Frontier Vol.28 No.6, 660-666, 2017
肝臓においてインスリン受容体シグナルは糖産生を抑制し脂肪合成を促進する。実際,肝臓特異的インスリン受容体欠損マウス1)や,肝臓特異的IRS-1/IRS-2ダブル欠損(LIRS1/2DKO)マウス2),肝臓特異的Akt2KOマウス3)では,いずれも糖産生の亢進と脂肪合成低下が認められる。NASH(nonalcoholic steatohepatitis)/NAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)の発症メカニズムに関しては,まだ十分に解明されていない部分も多いが,さまざまな疫学調査の結果などから,肥満に伴うインスリン抵抗性が重要な役割を果たしていることが強く示唆されている。BMI(body mass index)とNAFLDの頻度には正の相関が認められ,性・年齢・BMIなどの因子で調整した重回帰分析を行うとインスリン抵抗性指数であるHOMA-RのみがNAFLDと有意な相関を示すことが報告されている4)5)。インスリン抵抗性とは内在性に分泌されたインスリン,あるいは外来性に投与されたインスリンが効きにくい状態,具体的には血糖値が下がりにくい状態を指し,肝臓ではインスリン作用障害のために,十分なインスリンが存在するにも関わらず,肝糖産生を抑制できていない病態である。NAFLDや2型糖尿病が急増した背景には肥満に伴うインスリン抵抗性が基盤病態として深く関与していると考えられており,実際にしばしば合併が認められるが,これはインスリン作用の面からみると,一見相反する病態が共存している状態にある。
「KEY WORDS」NASH/NAFLD/肥満/インスリン抵抗性/2型糖尿病/選択的インスリン抵抗性
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