特集 糖尿病と肝臓
肝臓の糖・エネルギー代謝
Diabetes Frontier Vol.28 No.6, 632-638, 2017
血糖値は,さまざまな臓器や組織が連携して制御することにより一定レベルに維持されているが,なかでも,肝臓の役割は重要である1)。肝臓は,消化管から吸収されたグルコースが最初に流入する臓器であり,摂食時には取り込んだグルコースをグリコーゲンとして貯蔵し,また,空腹時にはグリコーゲン分解と糖新生によりグルコースを生産することで血糖値を一定のレベルに維持をする。肝臓での糖代謝は,インスリンやグルカゴンなどのホルモン,神経ネットワークにより調節されている。さらに,肝臓がヘパトカインを分泌することで末梢組織のインスリン感受性を調整し,全身の糖・エネルギー代謝の恒常性を維持するメカニズムも解明されつつある2)。これは,代謝リモデリング,すなわち,肝臓がエネルギー代謝の恒常性を維持するために行う応答過程であると考えられている。本来,代謝リモデリングは,過栄養や極端な栄養バランスの変化に伴う代謝異常から全身のエネルギー恒常性を維持するためのメカニズムである。しかし,過栄養状態が一向に改善されないような場合には過剰応答により代謝リモデリングが破綻し,ヘパトカインなどを介して全身のインスリン抵抗性を増大させることになる。特に日本人のような肥満が軽度な人種においては,代謝リモデリングの破綻が2型糖尿病やメタボリックシンドローム,脂肪肝,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)などの過栄養関連疾患の発症と密接に関与している可能性がある。
「KEY WORDS」肝糖代謝/インスリン作用/代謝リモデリング/AMPキナーゼ/ヘパトカイン
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。